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〜会議録(2019年2月18日予算委員会)〜
○小川委員 立憲会派の小川淳也です。
きょうは、同志の高井さんと一緒に、二人三脚で質疑をさせていただきます。
ただいまの大串さんの指摘なんですが、四重にげたを履かせたことで、総理、これだけはぜひ記憶にとどめてください。総理が就任されてから五年間で上がった賃金の伸びは一・四%です。一二年から一七年まで。
ところが、今回、この四重にげたを履いたことで、一七年から一八年、たった一年間で伸びは一・四%です。五年で一・四だったものが、一年で一・四になっている。この事実だけは動かしがたいほどに不自然ですから。これの説明責任は非常に大きいということを前提に質疑を進めさせていただきます。
総理、その前に、トランプ氏なんですが、中距離核戦力全廃条約から離脱を打ち出しています。イランの核合意から一方的に離脱を表明しました。エルサレムに大使館を移転して、中東を混乱させています。宇宙軍創設で、これから宇宙の緊張も高めるでしょう。パリ協定から離脱しました。地球温暖化の脅威は、このトランプ政権によって大いに高まると思います。米中の貿易戦争、自国第一主義、排外主義、壁の建設、どれ一つとっても、ノーベル平和賞に推薦するなんということはあり得ないし、日本国として恥ずかしいことだと思いますが、総理、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 今、同盟国の大統領に対して口をきわめて批判をされたわけでございますが、米国は日本にとって唯一の同盟国であり、その国の大統領に対しては一定の敬意を払うべきであろう、私はこのように思うわけでございます。御党も政権を奪取しようと考えているのであればですね。
その上で申し上げますが、ノーベル平和賞について、ノーベル委員会は推薦者と被推薦者を五十年間は明らかにしないということとしているわけでございまして、この考え方を私も尊重しておりますので、私からコメントすることは差し控えたい、こう考えております。
いずれにいたしましても、米朝関係につきましては、昨年、歴史的な米朝首脳会談を行ったのは事実でございまして、まさに、今までの不信の殻を破っていわば首脳会談を行った結果、朝鮮半島の非核化ということについては、トランプ大統領も金正恩委員長も、初めて米朝の首脳がサインをする形で共同声明が発表されたわけでございまして、このいわば方向について我々はしっかりと支援をしていかなければならない、こう思っているわけでございます。
今後の進捗ぐあいについては、まさに、私もトランプ大統領にいろいろなことを申し上げております。INF等々につきましてもいろいろなことを申し上げておりますが、北朝鮮をめぐる状況につきましては、まさにこれを突破口として、核問題、そしてミサイル問題、日本にとって重要な拉致問題について解決に結びつけていかなければいけない、このように考えております。
○小川委員 戦闘機を買えと言われれば買い、ミサイルを買い、そしてノーベル平和賞に推薦してくれと言われればし、そこまで対米追従、対米従属をしなければ、やはりこの国の総理大臣というのは務まらないものなんでしょうか。そういうことまで私は今回感じた上で、あえてのお尋ねでございました。(安倍内閣総理大臣「委員長」と呼ぶ)いや、また後ほど、おっしゃりたいことがあれば。
それで、統計についてなんですが、総理、統計をさわってはいけないと私ども申し上げていないんです。統計は、さわらないか、あるいは、さわったなら、どこをどうさわり、その影響がどうなのかをきちんと説明する責任がある。ましてや、やってはならないのは、ルールを変えたにもかかわらず、まるでそれが御自身の政策の効果であるがごとく喧伝するのは、政策的にも道徳的にも間違っているということです。統計に関して私どもが申し上げたいのはその点なんです。
その上で、具体的にお尋ねします。
まず、GDPが相当かさ上げされたことについては、初回の質疑で、二月の四日に指摘しました。そこで政権側が金科玉条のごとくおっしゃるのは、国際基準です。
きょうは事務方にお越しをいただきましたので、端的にお尋ねします。
私は、その質疑の中で、何点か上昇要因になるのではないかと指摘をしました。一体幾つの項目を見直し、その中にGDPの押し下げ要因は含まれているのかどうか。そして、幾つの適用を見送り、その中にGDPの押し上げ要因はあったのか否か。端的に事実関係をお答えください。
○長谷川政府参考人 お答え申し上げます。
国際基準、二〇〇八SNAの項目数は六十三項目でございます。うち、我が国で既に対応済みの項目などを除き、基準改定での対応を検討した項目は三十四項目でございます。そして、三十四項目のうち、対応した項目は二十九項目、残り五項目は基礎資料の制約等から対応が不可能であり、見送らせていただきました。
また、新しい国際基準、この二〇〇八SNAでございますが、経済活動をできるだけ幅広く記録するという考えがあるため、新たな対応はGDPの押し上げとなる項目が多いことは御留意いただきたいと思っています。
二〇〇八SNAに対応した項目二十九項目のうちGDPへの影響を試算した項目は八項目でありますが、そのうち二項目はGDPへの影響がほぼゼロ、GDPを押し下げると試算された項目はございません。
また、二〇〇八SNAの対応を見送った項目のうちGDPへの影響を試算した項目は一項目、これは官民パートナーシップ、PPPによる固定資産の所有権の明確化というものでございますが、そのGDPへの影響はほぼゼロと試算され、GDP押し上げ要因にも押し下げ要因にもなっていないところでございます。
○小川委員 今、重要な御答弁を抜かされたんですが、今、〇八国際基準とおっしゃっているのでちょっとややこしいんですが、国際基準に〇八年のものとそれ以前のものがあるんです。そこを私、整理して申し上げます。
国際基準に適合させたのは、今回二十九項目なんですよ。そして、試算が明確になっているものは全てGDP押し上げ要因です。そして、技術的に適用不可能なものは別です。一次統計がないとか、基礎統計がないとか、これは別。しかし、政策的判断で国際基準への適合を見送ったものは一つしかないんです。これは、まさに初回の質疑で指摘した私学の対応なんです。これは、GDPを〇・四%押し下げることが予想されており……(茂木国務大臣「〇・一から〇・四です」と呼ぶ)の間ですね、ということが議論されていた。
つまり、動機はいろいろおっしゃりたいこともあるでしょう。結果において、この金科玉条のごとくおっしゃる国際基準は、政策的判断により取捨選択をし、結果として押し上げ要因を採用し、押し下げ要因は見送った、結果においてそういうことになっているわけです。これが一つ。
もう一つは、以前も指摘をしましたが、その他要因、これがとにかく説明がつきません。いろいろなものをぶっ込んでおられるんでしょうが、とにかく、きょうは二回目ですので、第二次安倍政権以前はその他項目はマイナス要因として働き、そして、第二次安倍政権以降はウナギ登りのプラス要因として働いているということの事実確認、これをまずさせていただきたいと思っています。
その上でなんですが、私、きょうはもう一点指摘したい点があるんです。
勤労統計も、幾つもげたを履かせて随分と高くなった、五年分の高さを一年でやり遂げたということを申し上げました。GDPも、国際基準というげたを履き、そしてその他要因でげたを履き、私は、もう一つ、ひそかにげたを履かせた可能性がある要因について、きょう指摘したいと思います。
実は、総理も御存じだと思うんですが、GDPはいわゆる二次統計と言われておりまして、さまざまな基幹統計で出てきた数値の合成です。したがって、各統計でいい数字が出れば、GDPはよく出るという構造になっています。
今、ここにたくさん文字があってわかりにくいので恐縮なんですが、あえて並べました。第二次安倍政権になって、この基幹統計、しかも、GDPの計算にかかわる基幹統計を幾つ見直したかというデータです。事実です。
ざっと数を申し上げます。第二次安倍政権になって、全部で五十三件の統計手法を見直しています。そのうち三十八件がGDPに影響します。さらに、そのうちの十件、この赤囲みの部分なんですが、これは、統計委員会への申請もないのに、かつても申し上げました、統計法は申請主義の原則なんですね、統計委員会への申請もないにもかかわらず、トップダウンで、未諮問審査事項だといってやらせた見直しです。
ちなみに、申し上げます。民主党政権の三年間、統計を見直した件数は十六件しかありません。GDPに関連したものは、そのうち九件です。
いかに、五十三件を見直し、GDPに関連したものが三十八件と多く、そして、そのうちの十件は、諮問もしていないのに、やれと統計委員会から言われたものだと。異常な形でこの一次統計を見直した事実については、ぜひとめていただきたいと思います。
その上で、指摘します。
茂木大臣、これは、幾ら担当大臣とはいえ、ここまで細かいことを全て御存じでないでしょうから、まずは聞いていただければ結構です。
きょう午前中、階さんが家計調査について指摘しましたね。これは大事な指摘なんですよ。カードや電子マネー、商品券による購入の記入欄をふやしたわけですね。それによって六%家計消費がふえたという試算が提示されました。この点は実は統計委員会も指摘をしていまして、回答に変化がある可能性がある、影響が出る可能性があるよということを統計委員会が指摘しています。これは家計調査です。
二番目、個人企業調査。これは今まで、製造、卸と小売、そして宿泊・飲食、サービス、四業種しか対象にしていなかったんです。ところが、これを全産業に拡大しました。何が起きるか。飲食サービスは賃金水準が極めて低いですから、全産業に拡大したことによって、恐らく、相当、統計上出る賃金水準は上がるでしょう。私の試算では、二十万円台後半から三十万円台前半に上がると思います。さらに、この個人企業統計でも、全部入れかえをやめ、勤労統計と同じですね、一部入れかえ制に移行しました。
もう何点か指摘させてください。
科学技術調査、これもGDPに関連します。任期のない研究者を追加しましたね。研究開発費のうち、今までなかったサービスの開発に関する研究費を追加した。これも、統計委員会から、従前の集計結果との間に断層が出る可能性があるよ、影響をよく検証する必要があるという注書きが入っています。
作物統計。今まで入っていなかったソバ、菜種を追加しました。さらに、主要生産県の増減値から全国生産を推計する方法に変えました。これによって三%程度の誤差が出ると言われています。
もう二、三。
木材統計。これまで四十七県で調査していました。しかし、主要取扱県三十県に限るということをやりました。
鉄道車両統計。これまで、十名以上の九十四社しか対象じゃありませんでした。全事業所に拡大した結果、統計調査対象事業所は二百七、倍以上に広がりました。これも、誤解を招かないよう適切な対応をすべきだと統計委員会から指摘されています。
最後に、商業動態調査。家電、ドラッグストア、ホームセンター、合計十数兆円の売上げを捕捉した、そしてGDPに反映したのではないかと思われます。
今も、リフォーム市場を調査していますよね。
それこれ含めますと、今までおっしゃってきた国際基準への適合と、そしてその他項目に加えて、この基幹統計五十三、GDP関連三十八件を、しかも一部トップダウンで進めたことで、極めてこのGDPはかさ上げされた疑惑が高いと思いますが、大臣、いかがですか。
○石田国務大臣 お答えさせていただきます。
今の資料はホームページをもとに小川先生の事務所で作成されたということでございますが、少し経緯を説明させていただきますと……(小川委員「簡潔にお願いします」と呼ぶ)はい。
統計委員会は、平成十九年に発足以来一度も審議されていない基幹統計、いわゆる未諮問統計について、基幹統計としての重要性や必要性の観点からチェックを行うべきという議論が二〇一三年八月になされまして、同年の十月には、総務大臣に対して意見が提出をされました。
こうした意見も受けまして、二〇一四年三月に閣議決定された公的統計の整備に関する基本的な計画によりまして、未諮問統計について統計委員会が能動的に確認する仕組みを設け、基幹統計の改善を図ることといたしました。
これを受けまして、平成二十六年、二〇一四年については家計統計等五統計、それから二〇一五年には法人企業統計等三統計、それから二〇一六年には賃金構造基本統計等二統計、そして二〇一七年には船員労働統計等四統計の計十四統計について審議することとなりました。
毎月勤労統計調査については、二〇一五年六月二十五日の統計委員会基本計画部会において、二〇一五年十一月以降に審議を行うとのスケジュールを決定されたところでありまして……(小川委員「委員長、聞いてもいないのに」と呼ぶ)
○野田委員長 大臣、簡潔にお願いします。石田大臣、速やかに。
○石田国務大臣 二〇一五年十月の経済財政諮問会議における議論を端緒として審議を行ったとの指摘は当たりません。
○茂木国務大臣 先ほど幾つかの統計についてお話がありましたが、例えば家計資産とか賃金水準、これはGDPには関係しません。
GDPというのは、例えば消費であったり、さらには設備投資、そして政府支出、輸出入、こういった支出項目の積み上げででき上がってくるのがGDPであります。それに対して、家計の資産であったりとか賃金、これは所得の一指数でありますから、所得の指数が変わってもGDPには全く影響を受けない。
そのように申し上げた上で、一番大きな変更というのは、二〇一五年度のGDPに比べて、二〇一六年に変えたと。もちろん、これは何回も申し上げたので、民主党政権時代に始めたとは申し上げませんけれども、その対応によりまして、国際基準への対応によって二十四・一兆円、また、最新の産業連関表や推計方法の反映によりまして七・五兆円、合計三十一・六兆円の上方改定となっております。
その上で申し上げると、新基準のベースで見ましても、じゃ、二〇一二年の数字、新基準に直します。そうしますと、二〇一二年の名目GDP、これは四百九十四兆円。これに対しまして、同じ基準で見て二〇一七年度は五百四十七兆円で、政権交代から五年間で五十三兆円、日本経済は拡大しておりまして、五十兆円以上拡大している、この事実は変わりません。(小川委員「旧基準で」と呼ぶ)新基準です。新基準に直して、二〇一二年を新基準に直してです。
○小川委員 お言葉ですが、今私が試算したところ、新基準になって伸び率は一・五倍になっています。旧基準では残念ながら出してもらえないんですよね、一六年、一七年がどうなっているか。一五年までしか出さない。新基準で一・五倍ですから、恐らく、旧基準でやっていれば一・五分の一だと思いますよ。数字を出してもらえないので、指摘しておきます。
それから、家計調査は関係ないという話ですが、これもちょっと検証が必要ですが、見直しているんですよ。速報値を出すに当たっても、需要側の数値を縮小して、小売側、供給側の数字を、ウエートを増している。そういう形によっても、この数値のウエートづけを変更しているんです。これはよくまた調べてください。そういうことをやっているんですよ。
とにかく、こうやっていろいろ数値論争になることの評価は後ほどしたいと思います。その上で、安倍総理にどうしてもこの点をお聞きしたい。
この表をちょっとごらんいただきたいんですが、安倍政権になってから、物価が上がり、名目賃金は上昇、多少しているんですが、物価に追いつかない。したがって、実質賃金が低下し続け、国民は貧しくなっているという指摘に対して、総理はよく、総雇用者所得でいいんだとおっしゃるんですが、私は、それは本当か、それで本当にいいんですかというところを最後に議論させていただきたい。
○安倍内閣総理大臣 先ほど、幾つかの中でこっそり改定とか言っていましたのも、こっそり三倍、あれは別に、こっそり三倍といって、我々を含めてこっそりやったわけではなくて、これは、まさにもう既に明らかになっているように、厚生労働省内において三倍の復元をしていたということでございまして、私たちが、全数調査をしなければいけないということは……(発言する者あり)
○野田委員長 お静かにしてください。
○安倍内閣総理大臣 不正であるということをわかっていながら、それをわかっていながら、それをただ三倍にするなんということはあり得ないじゃないですか。そんなことはあり得ない。そのあり得ないことをまるであったかのごとく……(発言する者あり)
○野田委員長 御静粛に。答弁中、御静粛に。
○安倍内閣総理大臣 あり得ないことをあったかのごとくに推論して政権を批判するというのはどうかと思いますよ、そういう議論というのは。ということをまず申し上げておいて、今の御議論でございます。
国民みんなの稼ぎである総雇用者所得については、先日の新聞報道では、複数の専門家が、総雇用者所得か実質賃金かについて見解を述べていますが、複数のエコノミストが、もとは働いていなかった人が所得を得て総雇用者所得が増加するのは大きな意味があるや、総雇用者所得の伸びを景気回復の証拠とみなすことができる、こう述べているところでございまして、アベノミクスの取組によって女性や高齢者の就労参加が進んだことで、生産年齢人口が減少する中でも雇用が三百八十万人ふえたのは事実でありまして、そして、総雇用者所得は、名目においても、あるいは実質においても増加が続いているということであります。
これはまさに、今まで働いていなかった人は収入はゼロなんですが、でも、働き始めたら勤労者として統計されますが、それはパートで始めた場合は十万円ぐらいでしょうし、また、経験者が、六十五歳以上を経た人は、今までの給料はもらえないけれども、しかし、継続雇用が可能になれば、それは、今まで六十万円の人が三十万円になるかもしれませんが、新たに雇用が生まれていなくて、あるいは継続雇用が可能でなければ、その人はいわば年金だけになってしまったわけでございますが、しかし、そうではなくて、いわば継続雇用が可能になって給料を得る。でも、今まで取っていた給料よりは低いですから、継続していけばそれは賃金が下がったような統計になってくるけれども、実態としては、そうでなければ、いわばその新たにもらえる賃金はもらえていないわけであります。
そうしたことも含めて見る上においては、総雇用者所得の方が見る資料としてはいいのではないか、こういうことをエコノミストの皆さんもおっしゃっているんだろう、こう思うところでございます。
○小川委員 総理、申し上げます。
四百万人近く雇用がふえたと言われておりますが、そのうち約三割以上、百三十四万人は六十五歳以上のお年寄りです。百八十二万人、五割近くは現役世代の女性です。パートやアルバイトに出られているんでしょう。そして、約二割、七十万人強は高校生や大学生です。
この人たちの顔を思い浮かべたときに、総理が言うほど、景気がよくなったからとか仕事ができたからとか、そんな単純な話でいいのかというところをまさに議論したいわけです。
それで……(発言する者あり)ちょっと委員長、静粛にお願いします。
○野田委員長 皆さん、静かにしてください。
○小川委員 まず、その前に、総理、この表をもう一回ちょっとよくごらんいただきたいんですが、賃金の低い方がふえたことで下がるのは名目賃金なんですね。名目なんです。実質賃金が下がるのは、ひとえに名目賃金の上昇が物価上昇に追いつかない場合に起こるんです。そして、この物価上昇は、一四年の消費増税と円安政策、つまり、安倍政権がもたらしたものによって起きているんです。
これによって、申し上げます、一四年から一六年、三年連続で民間消費が落ち込んだのは戦後初だそうです。一七年に少し持ち直したそうなんですが、四年前の数字である一三年に届かなかった。四年前の数字に届かなかったのも戦後初なんだそうです。それぐらい、実際には戦後最大級の消費不況だというのが本当のところなんです。
今総理がおっしゃったこと、よく御答弁でもおっしゃいますので、私の方から御紹介します。
例えば、安倍家において、私がそれまで三十万円の収入を得ていた、しかし、景気がよくなって、女房がパートで十万円の収入を得たとする、安倍家としては四十万円なんですが、平均すれば二十万円に減ってしまう、これが今まさに起こっている、ここでは実質賃金と言っているんですが、これは名目なんです。ここは今後混同しないように御答弁いただきたいと思いますが……(安倍内閣総理大臣「同じだって」と呼ぶ)いや、物価よりも名目賃金が上がれば実質賃金は上がりますから、そこは一旦切り離して議論する必要があるんです。
それで、この答弁の中に、私は二つうそがあると思うんですね。
一つは、これは昭恵さんと申し上げると語弊がありますから、主婦の方としましょう。主婦の方が景気がよくなったからパートで十万円収入を得たという総理のこの決めつけが、世の中の実勢に本当に合っているのかというのが一点です。
もう一つは、総理と昭恵さんはいいですよ、仲むつまじく一緒に暮らしておられて。それは、世帯収入がふえれば世帯可処分所得がそのままふえるからいい。でも、世の中には、死別した人もいれば、離婚した人もいれば、シングルマザーもいれば、独居の高齢者もいれば、家族を持つほどに収入を持てない人たちもいる。
総理、この国で今、人口が減っていることは御存じだと思います。世帯数がふえていることは御存じですか。
○安倍内閣総理大臣 人口は減少しておりますし、例えば、生産年齢人口はこの六年間で五百万人減少しておりますが、その中で新たな三百八十万人が職についたわけでございます。
そしてそれは、先ほど私が申し上げたのは、名目と実質の関係がございますが、いわば毎月勤労統計の性格について申し上げたわけでありまして、これは実質も名目も同じことでありますが、事業所……(発言する者あり)実質も名目も同じですよ。それは事業所において、いわば事業所の総人件費でありますから、それは働いている人がふえたらその分で割っていくわけでございまして、先ほど安倍家の例として挙げたのは、それをもっとわかりやすくしたわけでございます。
ここは、名目であっても実質であっても同じことが起こっているわけでありまして、名目と実質の違いは、まさにそれを物価の上昇で割り戻しているかどうかという違いだけでありまして、ですから、それは、私が実質についてそれを解説していることは誤りではありません。でも、名目でも同じことが起こっているということではもちろんあるわけでございまして、それが、毎月勤労統計の賃金の出し方についての、これはいわば見方として御紹介をしているということでございます。
人口は減少しております。また、パートの皆さんが、それはいろいろな事情でパートに出られるわけでありますが、もちろん、これは景気がよくなったから仕事をするというよりも、景気がよくならなければ、なかなか仕事はないのは事実であります。
先ほど申し上げましたけれども、いわば我々の政権交代前は、今よりも三割も中小企業、小規模事業者が倒産をしているんですから、どんどんどんどん仕事が減っていたのは事実ですよね。
若い皆さん、就職する、いろいろありますよ。でも、高校と大学において、就職の内定率、就職率は過去最高水準で推移しているのも事実じゃないですか。昨年の十二月の一日の内定率は過去最高になっていますよ。これはファクトですから、それをやはり見なければいけないのであって、そうなれば……(発言する者あり)関係ない話ではなくて、それが全く関係ないかのごとくの解説をされるから、そうではないということを今申し上げているわけであります。
○野田委員長 お静かに。
○小川委員 総理が今、もしおっしゃることが本当にそうであれば、何で国民の七割、八割が景気回復を実感しないと答えるんですか。総理の実感が、総理の仮説が間違っているんじゃないですか。世の中の実感はとてもそんな状況じゃないんじゃないですか。一方的な思い込みじゃないですか、総理の。
総理、有効求人倍率も、これは今度よく研究してください。これは私もまだ研究中なので、はっきりした結論までは言えない。しかし、大体、求人数がふえると、求職者数は減っているんですよ、過去。確かにそうなんです。求人がふえて求職者が減るということは、結果として就業者数がふえているわけですから、有効求人倍率は確かに上がるんですよね。そこはそうなんです。
しかし、今、私が見る限り、初めてのことが起きていまして、それはつまり、新規の求職者数が初めて減り続けているんです。新規の求職者数というのは、過去を見ても、余り景気に変動されていないんです。恐らく、生産年齢人口の増大に伴って、七〇年代からの話ですけれども、新規の求職者数というのは一貫して、ほぼほぼ景気に左右されずにふえている傾向があるんですよ。
ところが、リーマン・ショック以降、人口減少が顕著になり始めた十五年ぐらい前から、歴史上恐らく初めてです、新規の求職者数が一貫して減り続けている。これもよく分析しないと、状況は、総理がおっしゃっているほど、こんなに単純なことなのかということになるわけです。
それで、きょう申し上げたかったのは、仮に、国民の全賃金、総所得が、総理がおっしゃるようにふえたとしましょう。それは事実ですから、ここ何年かは。それはそうですから、そうだとしましょう。しかし一方で、申し上げたように、今お答えになりませんでしたが、日本では人が減っています。しかし、世帯数がふえている。なぜか。単身世帯や少人数世帯がふえているからなんです。ということは、どういうことかなんです。
資料でお示しした、これは総務省の家計調査による家庭のコスト分析なんですね。一人世帯は、大体月々十六万円ちょっとかかるんだそうです。これが二人世帯になると、二十五万で済むんだそうです。三人なら二十九万、四人なら三十二万、五人なら三十四万。そして、六人なら三十、ほとんど変わらない。昔は大体一世帯五人が標準だったんだそうですね。今は二・三とか二・四まで減っているんです。
ということは、申し上げたとおり、仮に世帯収入が少々伸びたところで、まあ離婚や独居やシングルマザーや、いろいろな生活の圧迫感を考えると、少人数世帯になれば、家賃や光熱費といった固定費だけでいっぱいいっぱいになるんですよ、国民生活は。こういう状況の中で、さっき申し上げた、戦後最大の消費不況とも言える状況が起きているわけです。
したがって、総理がよくおっしゃる、総雇用者所得をマクロで見るのが一番いいんだとか適切だというお考えは、極めて一面的で、そして浅はかで、一人一人の国民生活の実態に寄り添っていないと私は思いますが、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 雇用をふやしたことをいわば悲観的に見るというのは、驚くべき経済的な姿勢だと思いますよ。
世界じゅうどの国も、雇用をふやしたということについては、いわばそれぞれの政府の実績であります。三百八十万人雇用をふやしたというのは、実際に新たな雇用が生まれたんですから。そして実際、労働生産人口が五百万人減る中において、三百八十万人これをふやしたということであります。
これを評価しないのであれば、もうほとんど議論が私はかみ合わないんだろうという気がするわけであります。いわば、雇用をふやすということに全く熱心でないということについては、私は驚きと言わざるを得ないと思います。
そこで、例えば家計調査結果でありますが、勤労者世帯の収入は一世帯当たりの平均で、労働者一人当たりの賃金の動向や一国全体の雇用者所得の状況を示すものではないんですが、その上で、家計調査では、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の実収入が、昨年から実質で減少に転じているのは事実でございます。
それはさまざまな、今委員がおっしゃったような事情もあるんだろうな、こう思いますし、特にお年寄りの方々が、いわば世帯主として、例えば奥様と一緒に新たな世帯となっていく、普通、今まではもう少しお子さんたちやお孫さんたちと住んでいたというのが、そんな形でなってきているということもあるんだろうと思います。
これは、高齢者を世帯主とする世帯の割合が上昇するほど、世帯構造が変化する中で、好調な雇用情勢を反映して、再雇用などで働く高齢者の就業がふえたことでもあります。こうした、いわば年をとっても仕事ができるという状況にはなってきた。大体、六十歳以上、六十五歳以上で就業するというのは、今までは相当ハードルが高かったはずですよ。でも、その中で新たに雇用が生まれたというのは、そういう方々でも、やはり自分で仕事を選べるということも起こってきたということであります。
なお、ここから大切なところなんですが、世帯主年齢が六十歳未満の世帯では、名目でも実質でも増加をしています。家族全体の稼ぎは増加をしているということでありますし、また、世帯主本人の収入を見てみても、世帯主本人ですよ、これは、ですから、いわば私が言っている総雇用者所得とは違いますが、世帯主本人の収入を見ても、六十歳未満世帯では名目でも実質でも増加をしているということであります。
○小川委員 総理、お願いします。ちょっと、私の申し上げていることをよく聞いていただきたいんです。仮に少々ふえても、この固定費の増加に追いつかないでしょうと申し上げているわけです。格段に違いますから、少人数世帯化が進むということは。そのことに思いをいたして御答弁いただかないと、国民は救われません。
ある、これも一つの例ですが、もうあえてお便りを紹介させてください。今回の質疑を通して、いただいたお便りです。
以前、商社マンをしていました。バブルで破産して、今は新聞配達とアパート清掃で暮らしています。七十代の名古屋の男性です。名古屋でも、住宅の二、三割が空き家、つまりローンが払えず夜逃げしている家もあると言われています。生ごみの回収は、昔は自分みたいなおじいさんばっかりだった。少し前から若い青年もするようになり、今は若い、それこそきれいな女の子、親が倒産したらしいですが、もしている。景気なんて全くよくない。安倍さん、本当の底辺の人間、見ていますか。国民の目も開かせてください。本当に、今回の質疑、ありがとう。手紙を書きます。というお便りもあるんです。
そういうことに応えていただくために、総理、きょう、本当はもう少し、何点かお聞きしたいこともあったんですが。
私、いろいろ数字を調べました。統計の中身も調べた。素人だけれども一生懸命調べました。でも、途中から、何でこんなに数値論争をしているんだ、何でこんなにこの政権と数値論争でもがいているんだろう、私はそう思うようになったんです。
総理、もしこの国の総理大臣が、いい数値を持ってきたら、いい数字はもういいから、いい数字はよくいっているんだろう、それはもうおまえたちで勝手にやっていってくれ、どこかに悪い数字はないのか、そこで困っている国民はいないか、そこに社会の矛盾が埋もれていないかと言うような総理大臣だったら、そもそもこんな数値論争は起きていないじゃないか。自分の政策のあたかも全てが効果であるかのように喧伝し、統計のルールを変えたことの説明も不十分で、そういう総理大臣の姿勢である限り、国民は救われないし、正しい経済政策は打たれませんよ。
時間が二分だけあるので、総理、これだけ聞きます。
GDPに関して、一六年の十二月に、立ち上げた研究会、こういう有識者の指摘があります。幾つか言いますが、元気になる材料があるので漠然とした不安感を打ち消すことに使えないか、GDP統計を。冗談じゃないでしょう。GDPの計算に入れて、国民が何を元気づけられるんですか。
マスコミには従来から都合のいい統計をつくっているという論調がある、各省とも、制度上そのようなことはできないようになっていると言っていただいていると思うが、今回についても、そのような誤解が絶対生じないように、客観的かつ明確な手順に沿って反映した結果であると説明していただきたい。後ろめたいんじゃないですか。
そして、問いに答えてほしいのは、この一番上の問いなんです。
るる申し上げたGDPの基準改定と政府が掲げている名目六百兆円の目標との関係はどう説明するのか、目標を設定した時期、つまり一五年の九月と、目標を達成する時期、二〇年ごろでは計算方法が違っているので、どちらかにそろえて比較することがフェアなのではないか。この問いに対する総理のお答えをいただいて質問を終わりたいと思います。
○野田委員長 まず、担当の茂木国務大臣。簡潔に御説明してください。
○茂木国務大臣 さまざまな研究会での個々の委員の意見について評価する立場には政府としてありませんが、政府としては、数字を大きく見せるための基準の選択とか統計手法の選択というのは全く行っておりません。
先ほども同じ基準で比べた場合にどうなるかというお話を申し上げましたが、日本だけRアンドDについて資本化しないとか、そういう世の中じゃないわけですよ。古い基準で日本だけいいとか悪いとかいうのではなくて、新しい国際基準で、RアンドDも強化して、国際競争力をつけて、実態として六百兆円を目指していきたいと思っております。
○安倍内閣総理大臣 私もまさに、今、我々の経済政策で全ての方がそれで満足しているというふうにはさらさら思っていませんし、まさに光が当たっていない方々に注目をし、光を当てていくことが政治の使命だと思っていますよ。そういう政策を進めています。
ですから、家庭の経済事情に左右されないで、頑張っている子供たちが高等教育も受けられるようにするという政策のもとに、来年の四月から真に必要な子供たちに対するいわば高等教育の無償化を進めていくという政策を進めていきます。また、低年金者の方々に対する支援もしっかりと今回の消費税の引上げとともに行っていくということをさまざま行っています。
しかし、仕事がふえたということについて、それについて批判をされるということについては我々は容認ができない、受けとめることができないわけでございまして、我々は、まさにそういう中においては、いわば自分の孫、最初の孫のときには大変就職に苦労した、大変自分も心配したけれども、今度は就職は本当によくて助かったという手紙だっていただいていますよ。そういうものももちろんありますよ。でも、そういうことは私も余りこういうところでは御紹介しませんが、さまざまな声がある中において、どういう政策を、マクロ政策をとっていくべきか、あるいはミクロの政策をとっていくかということが求められているんだろうと思います。
そこで、GDP統計の基準改定は、最新の国際基準への対応などを行ったものと承知をしておりまして、かさ上げとの指摘は、これは当然当たらない、このように考えております。
○小川委員 終わります。
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