民主党 衆議院議員 小川淳也
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〜会議録(2014年6月6日外務委員会)〜

○小川委員  民主党の小川淳也でございます。

 G7の議論でありますが、G7という響き自体が非常に懐かしく感じています。こういうときですから、価値観を共有する国はしっかり連携を深めて一枚岩でやっていくということは大事だと思いますが、一方で、本当にロシアや中国を抜きにして、これからの世界秩序、国際秩序を議論し、実効ある解決策を生み出していけるんだろうかというクエスチョンマークも私の中にはありながら、現在の推移を見守っております。

 その中で、中国に対する名指しの批判というのが飛び交っているという報道がありました。それからもう一つ、最近のアジア安全保障会議、シンガポールでの会議でも、日米と中国が応酬を交わした、空中戦を交わしているという報道もありました。

 そこで、ちょっと基本的な外交姿勢についてお聞きしたいと思います。

 確かに、囲い込みも包囲網も空中戦も大事かもしれません。しかし一方で、本当に問題を抱えていると思われる国との間では、直接対話、膝詰めで、誤解のないように、本人を目の前にして話し合うということが極めて大事ではないかと思いますが、特にアジア安全保障会議でいえば、これは防衛省の対応かと思いますが、中国との間で空中戦をやりつつ、防衛大臣は、日米豪、日米韓、日・ベトナム、ミャンマー、イギリス、フランス、シンガポール、トンガ、ニュージーランドと二国間会談に及んでいるようでありますが、肝心の中国とは全くアクション、モーションが見えてきません。

 その点、外務大臣、包囲網も囲い込みも空中戦も結構ですが、私の申し上げる直接対話に向けて努力をするという点から甚だ不足していると思いますが、その点の認識をお聞かせいただきたいと思います。

○岸田国務大臣  まず、先般のG7の首脳宣言ですが、この首脳宣言の中では、海洋の自由ですとかあるいは飛行の自由等、国際ルールとして当然のことを確認した次第でありまして、これは特定の国を名指しにしているものではないと承知をしています。そういった特定の国は首脳宣言の中に明記はされておりません。これは、国際社会として当然守るべき国際ルールについて確認したということであります。これをG7の総意として確認したわけですから、これは中国を含め国際社会全体としてしっかりと受けとめてもらうべきであると考えます。

 それから、先般のシャングリラ対話における安倍総理も、これは特定の国を名指しにしたものではありません。法の支配の重要性を力説したということであります。

 G7の首脳宣言、あるいは安倍総理の演説は、こういった、今申し上げたような内容であると考えておりますが、いずれにしましても、御指摘の中国との対話、これは当然のことながら重要なことであります。

 今、日本と中国、難しい局面にこの二国間の関係はありますが、こうした難しい局面であるからこそ対話が重要だと認識をしております。日本と中国の間において不測の事態も発生しかねない、こうした危険な事態も発生している中でありますので、両国の対話、特に高い政治のレベルでの対話、首脳会談等が行われることは、両国の国民にとっても安心につながることだと思いますし、こういった対話を通じて両国間をコントロールすることが地域や国際社会の平和や安定につながっていくと考えます。

 従来から、我が国は対話のドアはオープンである、こう言い続けております。ぜひ中国側にもこうした対応を受け入れてもらいたいと強く願っております。

○小川委員  対話の重要性に触れていただいたことはありがたいことだと思いますが、その努力が不足しているんじゃないかというお尋ねであります。

 折しも、中国からは、王冠中さんですか、人民解放軍の副総参謀長が御出席だったということでありますし、これは防衛省の対応も半分以上責任があると思いますが、そういうことに対するアクション、モーションがもっと見えてくる必要があるのではないかと思います。

 もう一つ、北朝鮮との対話について、特に拉致問題が一定の進展を見せつつあることに対しては心より敬意を表したいと思いますし、また、これが大きな成果につながることを心より御期待申し上げたいと思います。基本的にそういう立場であります。

 しかし一方で、最近の報道ぶりなどを拝見しておりましても、日本政府が拉致問題のみに大変前のめりになって、制裁解除を含めて、対北朝鮮の対話が、日本一国だけが融和姿勢に傾くということに関しては、核やミサイルの問題を抱えている特にアメリカや韓国との関係で、その姿勢が際立ち過ぎるのではないかということを懸念する報道もかなり間々見られます。その点に対する大臣の御認識をお聞きしたいわけであります。

 特に、二〇〇二年の日朝平壌宣言では、日本と北朝鮮双方は、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」とあります。それから、北朝鮮は「ミサイル発射のモラトリアムを二〇〇三年以降も更に延長していく意向を表明した。」とあります。

 日朝平壌宣言は生きていますよね。ここに対しては、ひとり日本のみならず、関係諸国を含めて相当大きな期待が込められた日朝平壌宣言ではなかったかと思います。

 こういうことも含めて、拉致問題が極めて重要な問題であることはもう論をまちませんが、しかし、日朝間に横たわる課題は、あるいは日朝に限らず、他の連携国、友好国との間を含めて極めて重大な問題を別に抱えているということとのバランスをこれからどうとっていかれるのか、その点、お聞きいたします。

○岸田国務大臣  まず、北朝鮮との間のさまざまな問題につきましては、まず、拉致問題は我が国として特に主体的に対応しなければならない問題ではありますが、従来の我が国の方針、ミサイル開発、核開発、そして拉致問題、こうした諸懸案を包括的に解決していく、こうした基本的な方針は従来と全く変わっておりません。

 そして、その中で、核、ミサイルにつきましては、北朝鮮は引き続き開発を継続しております。これは、御指摘の日朝平壌宣言、あるいは六者会合の共同声明、さらには累次の国連の安保理決議、これに明らかに違反をしております。我が国として、これは東アジアの平和と安定に対する脅威であり、絶対容認はできないと考えております。

 ぜひ、今後とも、米国、韓国を初め関係国としっかり連携しながら、こうしたミサイル開発、核開発につきましても、北朝鮮の前向きな行動をしっかりと求めていかなければならないと考えています。

 ぜひ、こうした諸懸案を包括的に解決していくという方針は、関係国にもしっかり理解を得るべく丁寧な説明は続けていきたいと考えています。

○小川委員  私が指摘している構図といいますか、その点については、もちろん、大臣も十分にお考えいただいていることと思いますが、改めて確認をさせていただき、関連して、きのう、G7の会場内だと思われますが、総理とオバマ大統領が十分程度立ち話をしたというようなことが報じられています。その中で、北朝鮮に対する向き合い方も話題になったのではないかというようなことが報じられております。今私がお尋ねした観点から、このオバマ大統領との立ち話に関して大臣はどう認識しておられるのか、いないのか。

 それからもう一点、今般の北朝鮮との合意事項でありますが、今申し上げたような観点からいいますと、調査開始時点で制裁解除に踏み切るというのは甚だ早計ではないか。後々はしごを外されたり、思ったような成果につながらなかったりというリスクがあり、一方では、先ほど申し上げたような、関係諸外国との間でまさるとも劣らぬ重大な問題を抱えているという背景もあり、これは、調査を開始した時点で制裁を解除するというのは早計に過ぎるという受けとめがあると思います。

 この二点、オバマ大統領とのきのうの立ち話、そして、調査開始のみをもって制裁解除することの、いささか前のめりな姿勢と受けとめられかねない点、二点、お答えいただきたいと思います。

○岸田国務大臣  まず、オバマ大統領と安倍総理の立ち話でありますが、北朝鮮に関しましては、安倍総理から、日朝政府間協議の結果について説明し、今後とも引き続き日米で連携して対応していくことで一致した、こういった内容であったという報告を受けております。

 そして、調査を開始する時点で制裁の一部を解除するということ、この点について御質問をいただきました。

 今回、日朝間で協議を行い、一つの一致を見たわけですが、その中で特別調査委員会の立ち上げが確認をされました。この特別調査委員会の実効性をしっかりと確保することが第一歩として何よりも重要だと認識をしております。

 今回、特別調査委員会の立ち上げに当たって、調査を開始するまでに、この委員会の組織ですとか構成ですとか責任者、これを明らかにする、こういったことで日朝間で合意をしています。そして、その調査が始まりましてからも、さまざまな調査の内容につきまして日本側にしっかりと通知、連絡をしていくこと、さらには、調査の実態につきまして、実効性、内容をしっかり確認するために日本側がかかわっていく、こうした具体的な内容についても文書において確認することができました。

 こういった取り組みによって特別調査委員会の実効性をしっかり確認し、そして制裁措置の一部解除を行う、こういった合意をした次第であります。

 ぜひ、こうした文書での確認、そして協議の内容等を踏まえまして、この特別調査委員会の実効性を高めるべく最大限努力をしていきたいと考えています。

○小川委員  なかなか一筋縄ではいかない相手と交渉しているということと、そして、特にアメリカ、韓国との間でまさるとも劣らぬ重大な背景を抱えているというこの二点に改めて御留意をいただきながら、しかし、一定の成果につながることを心より御期待申し上げたいと思います。

 最後に、前回、質問の機会をいただいたときに、集団的自衛権の行使と日米安全保障条約との兼ね合いをお尋ねいたしました。大臣は早々と、日米安全保障条約の見直しは視野に入っていないという御答弁でございました。しかし、そのときは通告が十分でなかったこともございまして、余り議論が深まらなかったような気がしております。

 それに関連して、私自身、ちょっと最近こう感じています。

 基本的に、この集団的自衛権の議論を個別事例の積み上げで深めていくという総理なり政府の姿勢に対しては一定の理解をしています。余り抽象的、観念的に議論しても得るものは少なく、大事なのは個別事例に対する具体の対応だというその姿勢に関しては一定の理解をする立場であります。

 しかし、そうはいっても、最近の議論を見ておりますと、メーンストリームとは思えないような、こんなことは本当にあるのかといったような事例も含めて、ちょっと言葉はあれですが、非常に瑣末な限界事例、周辺事例と言わざるを得ないようなケースを、しかも複数、多数並べ立てることで、この集団的自衛権の本来持つ意味なり意義がかえって見えにくくなっている。そのことが議論の本質を見誤らせたり、あるいは時に国民に誤解を与えかねなかったりというおそれも出てきているということを私は危惧しております。

 そこで、ダイレクトにお尋ねしますが、邦人保護とか邦人護衛とかがこの集団的自衛権の本来の意味ではなく、同盟関係にあるアメリカとの間で、日本がやられたときはアメリカに守ってもらえる、アメリカが攻撃を受けたときは日本はほっておけないでしょう、アメリカへの攻撃に対して日本も実力を行使しなければ同盟関係を維持できないという、そこの双務性の議論こそがこの集団的自衛権の議論の本質だと思いますが、大臣、その点の認識、お聞かせいただきたいと思います。

○岸田国務大臣  いろいろ重要な点に触れていただきました。

 まず、冒頭、集団的自衛権の議論と日米安保条約との関係について、私が安保条約を改正するつもりはないという答弁をしたという点について触れていただきました。

 我が国は、今、我が国の国民の命、暮らしを守るために安全保障の法的基盤をどうするべきなのか、こういった議論を行い、その中で、限定的な集団的自衛権の行使等も含めて議論を行っている最中ですが、まず、日米安全保障条約自体は、これは、我が国の施政下における武力行使、個別的自衛権という考え方に基づいて安全保障条約の履行が考えられておりますので、安保条約自体の改正は考えていないということであります。

 そして、さまざまな事例、どうも実際はあり得ないような事例を挙げて議論が混乱しているのではないか、こういった御指摘もありました。

 しかし、こういった事例は、一つ一つ、決してあり得ないことではないと考えていますし、いずれにしましても、あらゆる事態に切れ目のない対応を行っていく、こういったことのためにしっかり準備をしていく、こういった考え方は重要なことなのではないかと考えます。

 ぜひ、こうした議論は、具体的な事例に基づいて、丁寧に今後とも進めていきたいと考えております。

○小川委員  大臣、御答弁の中で、個別的自衛権に基づいて日米安保条約ができているという御答弁であれば、集団的自衛権の行使に踏み切るのであれば、憲法解釈を変更するのであれば、なおさら、新たな事態を想定した日米安全保障条約というのはあっていいという議論に論理的になると思いますよ。

 それから、切れ目なくあらゆる事態に対応するためにも、個別事例を議論することは大事ですが、その大もとになる考え方、抽象論、一般論をしっかり押さえていく必要が逆にあるんだと思いますよ。

 そこで私が申し上げているのは、集団的自衛権行使の本質は米軍の防護にある。邦人保護とかなんとかじゃない。アメリカ軍が攻撃されたことに対して日本国として貢献していくという同盟の実質化というところにあるんだと思います。そして、それはすなわち、ひいては日米安全保障条約の見直しにつながり、現に、事務的にお聞きしたところでは、米韓安全保障協定の中には相互防衛義務が入っている。そうあるべきだと思いますよ、この議論を本格的にやるのなら。そういうことを射程に置いた議論こそすべきだ。

 そして、ひいては北朝鮮が、考える限り、最大の蓋然性の高い事案です。であるならば、日韓との間の安全保障協定、しかも相互防衛貢献、相互援助を含めた日韓の間のしっかりした協定という世界に踏み出していくということを正面から議論してこそ、私はこの議論は意味あるものになると思います。

 世論に配慮しているのか公明党さんに遠慮しているのかわかりませんが、具体的と言えば、それは格好いいかもしれません。しかし、本当にささいな、ささいなという表現はお叱りをいただくかもしれませんが、限界事例を複数並べ立てることで極めてこの議論の本質を見えにくくしている。しかも、はなから日米安全保障条約あるいは日韓との防衛安全保障協定のような議論を度外視していることで、射程外に置いていることで、極めてそのこともわかりにくい議論になっている。

 したいなら、正面からしたらいいと思う、この議論は。そのことを指摘したいと思います。御答弁があれば、どうぞ。

○岸田国務大臣  まず、日米安全保障条約ですが、五条において、我が国の施政下における武力行使に対して日米で共同で対処するということを定め、六条において、我が国の平和そして極東の平和と安定のために、米軍が我が国の施設・区域を使用するということを定めています。

 日米安全保障条約、それぞれの義務は同一ではありませんが、これはバランスがとれているというふうに認識をしております。双務性について触れられましたが、日米安全保障条約全体はそういったバランスの中にあると認識をしております。

 そして、何よりも、今行われている議論は我が国の安全保障についての議論であります。我が国の国民とそして平和な暮らしを守るためにはどうあるべきなのか、これを我が国が主体的に議論しているわけであります。もちろん、この議論がさまざまなことに影響することは否定はいたしませんが、何よりも、我が国として自分たちの国民と暮らしを守るためにどうあるべきなのか、これが議論の中心になければならないと認識をしています。

○小川委員  また機会を改めます。

 ありがとうございました。

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