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〜会議録(2014年5月21日外務委員会)〜
○小川委員 民主党の小川淳也でございます。
先ほどの渡辺委員の御指摘、大変興味深くお聞きしておりました。ホームページの書き方は難しいと思います。
ただ、自分自身の経験で、非常にお恥ずかしながら、そんなに前のことじゃないんですけれども、初めてアメリカを訪れたときは、ちょうど銃の乱射事件とかも大きく報道されたり、あるいは銃規制に反対する声が強いという報道などを見て、そこらじゅうにいる人はみんな銃を持っているんじゃないかという強迫観念のもとに訪れたことを思い出します。
翻って、大変テロに苦しんでいる国とかそういう地域であっても、そこには九九・九九%日常の平穏な暮らしがあり、そこでとうとい暮らしが営まれているということもあわせて、これは難しいと思いますが、伝えていく必要があるのかなということを感じながらお聞きしておりました。ちょっと冒頭、触れさせていただきたいと思います。
投資協定についてお聞きします。
上田委員の御指摘にもございましたが、日本国の取り組みは、これだけ貿易立国、また国内の総人口が減少していく中にあって、非常に取り組みがおくれているというふうに感じます。
先ほど、多国間条約にこだわった、あるいは自由化協定にこだわったというような御答弁もございましたが、二国間で、ドイツが百三十六国、中国が百二十八国、スイスが百十八国、イギリスが百四国、フランス百二国、韓国九十国に比べますと、日本は三十三国、いかにも立ちおくれ、二周、三周おくれだと思います。
大臣、これまでの戦略が間違っていたんですか、今後、どうされるんですか。
○岸田国務大臣 投資協定の締結については、今日までの我が国の取り組み、先ほども答弁の中で少し御紹介をさせていただいたとおりであります。アジアの国々を中心にこれまで三十本、我が国としましては協定を締結しております。他国との比較において数が少ない、これはもう御指摘のとおりだと思っています。
その理由については、先ほども答弁の中にありましたように、欧米諸国との歴史的な違いもあると存じます。また、ただいま中国の御指摘もありました。中国との比較を考えますと、先進国である我が国は、従来、日本企業の進出支援、こういった観点から、開発途上国と重点的に投資協定を締結してきた。
一方、中国、さらには韓国も当てはまるかと思いますが、こういった国々は、我が国に比べて開発途上の段階が長かったということから、自国への外資誘致の観点から、あるいは先進国の求めに応じて、早い時期から先進国との投資協定も締結してきた、こういった事情の違いもあります。こういったことから、数の上において差がついているというのが現状であります。
しかし、今日までの歩みはともかくとして、これからが重要だと認識をしております。これから未来に向けては、我が国としまして、海外投資による新興国の成長を取り込む、あわせて、日本市場に外国投資を呼び込む、こういった観点を重視しまして、ぜひ積極的に締結を進めていきたいと考えております。
○小川委員 大臣、これまではともかくとしてというお言葉に、やはり日本外交の弱さがあるような気がしますよね。
今の御答弁の中でも、中国、韓国は早くから途上国に焦点を当ててきた。一方、日本は先進国サロンの一角でしたから、何となくそこに甘んじて、戦略性なり貪欲さなりを欠いてきた、あるいは将来に対する展望を甘く見てきたということを、むしろ総括し、反省すべきじゃありませんか。そういう緊張感といいますか切迫感が感じられない答弁だったというふうに感じます。その点、指摘をしたいと思います。
関連して、きょうのサウジアラビアとの協定が一つの内容でありますが、日本にとっては原油の輸入先としては最大の相手国であり、いただいた資料によりますと、これは一二年現在ですが、既に九十三社ですか、在留邦人も七百八十人、石油を初めとした多方面の資源関連に投資が進んでいるにもかかわらず、中東でいえば、隣国エジプトなんかとの間では七〇年代に既に投資協定が締結されているというふうに言われておりますが、なぜこの二〇一四年現在までかかったのか。しかも、交渉は二〇〇〇年にスタートしたにもかかわらず、十四年の歳月をかけてようやくここにたどり着いた。
しかも、もう少し申し上げますと、日本が現在進めようとしている、参入後の保護に加えて、参入段階、投資段階、投資財産の形成段階で保護をするという自由化型の協定にも至れなかった。資料によりますと、最近結んだ二十五カ国のうち、二十カ国は自由化型だ、参入前の権利をも保護しようとするものであったにもかかわらず、サウジとの間ではそれにも至れなかった。
この辺の背景、なぜこんなに遅い時期になったのか、なぜこんなに交渉から時間がかかったのか、そして、日本が目指すべき自由化型の投資協定を結ぶことがなぜできなかったのか、その辺について触れていただきたいと思います。
○岸田国務大臣 まず、先ほどの答弁で、投資協定の締結について、今日までの歩みについて反省が足りないのではないかという御指摘がありました。
御指摘はしっかり受けとめたいとは思いますが、申し上げたかったのは、要は、時代は大きく変化している、絶えず変化するスピードについていくべく我が国の対応もしっかり考えていかなければいけない、こういったことを申し上げた次第であります。その時々において最善を尽くすべく努力をしていく、こういった姿勢が重要だと考えます。
その上で、ただいまの質問にお答えをさせていただきたいと思います。
まず、時間がかかった、おくれた、このことについての理由でありますが、サウジアラビアとの交渉、一九九七年において交渉開始を打診いたしました。その後、交渉会合を開催したわけですが、結果としまして、両国の考えが余りに隔たりが大きかったため、交渉を一旦中止するということになりました。この中止が六年間にも及ぶという時期がありました。
そして、二〇〇六年に交渉を再開するということになったわけですが、当初、この協定の作成に当たっては、自由化型、これを作成する方向で交渉を進めたわけでありますが、この自由化型の要素を含めるということについてサウジアラビア側の国内調整が難航したということがありました。このため、さらに時間を要するということになり、そして二〇〇八年に実質合意が果たされたわけですが、署名に向けたサウジアラビア側の国内手続の過程で改めて両国間の文言調整が必要になり、そこでまた時間がかかるというような過程もありました。
そういったことから、一九九七年から考えますと十七年間を要したということでありました。
そして、結果として、自由化型でなくして保護型の形態をとった、このことについて御質問がありました。
今申し上げましたように、当初は自由化型を作成するべく交渉を進めたわけでありますが、サウジアラビアに自由化型の投資協定を締結した経験が当時なかった、こういった事情もあり、サウジアラビア側の国内調整がつかなかった、これが現実でありました。
我が国としましては自由化型を追求したわけではありますが、近年、我が国企業のサウジアラビア進出は大変加速しております、やはりこういった企業に対して早期に適切な法的保護が必要だという現実があります、こういった現実もありますので、結果としまして、まずは保護型の投資協定を締結する、こういったことで、少しでも日本企業を保護するべくしっかりとした体制をつくらなければいけない、こういった判断に基づいて、今回、保護型の協定締結を目指したというのが実情であります。
○小川委員 ありがとうございます。
大臣、重ねてで恐縮ですが、時代は変化している、時々最善を尽くす、それはそのとおりだと思います。しかし、先ほどの御答弁で、中国と韓国は早くから途上国を視野に入れていたというその戦略性からしますと、時代を追いかけるというよりも、先を走らなければならないんじゃないですかというのが私の側の主張であり、そこは、先進国であり大国であることにある意味甘んじていられたのが今までの日本、しかし、これからの日本はそうはいられないという危機感がベースにあるべきだという主張であります。そのこともぜひ酌んでいただきたいと思います。
その上で、サウジ、やはり違和感が強いです。先ほど申し上げたように、これだけ貿易の上では依存度の高い相手であり、その関係上、日系企業、日本人もたくさんいるにもかかわらず、この二十一世紀初頭、二〇一四年まで待たなければならなかったということに関しては極めて違和感が強いですし、なおかつ、協定の内容そのものに、今おっしゃったような、日本側が望む形には残念ながらならなかったという点において課題が多いということは、もちろんこれは反対をするものではありませんが、きょう確認をしておきたいと思います。
関連して、もう一本はミャンマーであります。
恐らく、東南アジアの中でもこれは最後のフロンティアじゃないですかね。航空協定も同時に改定されるようでありますが、いただいた資料ですと、日本からミャンマーに訪れた人は、〇八年が一万人、現在五万人、大変急上昇しております。この辺から見ましても、一刻も早く急ぐべき相手方の一国なんでしょう。そういう意味では、交渉からわずか一年で妥結に至るということで、先ほどのサウジとの例からいえば非常に先進的だと思います。うまくいっているということなんだろうと思います。
二点お伺いします。
そうはいっても、軍事政権あるいはアウン・サン・スー・チーさんの問題を含めて、非常に政治的に閉鎖性が強いという印象をいまだ拭えません。総選挙を経て民主化の道をたどっているというふうにお聞きしていますが、そういう意味で、政治的な安定性、また政治的に開かれているのかどうか、あるいは国際的なスタンダード、人権行政を含めて、こういった点において現在のミャンマーの政治情勢をどう評価するか、これが一点。
それからもう一つは、こちらは自由化型の投資協定を結んだというふうにお聞きしておりますが、極めて重要な、外国人の投資に際しては全てがライセンス制度であるという留保が残ったままになっている。これは、事実上、大変重大な参入規制であり、自由化型だという名目を極めてないがしろにしかねない、実質の伴わない、中身の担保されないものになる可能性があると思います。
その二点、ちょっと論じていただきたいと思います。
○岸田国務大臣 まず、ミャンマーの実情でありますが、ミャンマーにおきましては、二〇一一年の民政移管以降、テイン・セイン大統領のもと、民主化、法の支配の強化、国民和解あるいは経済改革、こうした諸改革が進められております。政治面でも、例えば、二〇一一年以降、政治犯の釈放を随時行っているほか、海外在住の民主化活動家の帰国の呼びかけ、あるいは事前検閲制度の廃止等の措置を実施してきております。
こうしたミャンマーの改革努力は、我が国としましてもしっかりと支援をしていかなければならないと認識をしております。
そして、今回、日・ミャンマー投資協定の中身について御質問がありました。
外資に対する営業ライセンス制度を留保している、この点についてですが、まず、ミャンマーの会社法第二十七条A第一項という条項の中に、いかなる外国企業もミャンマー連邦政府の営業許可を必要とする、こういった規定があります。ミャンマーの国内法にこういった規定があるわけですが、この規定をそのままの形で投資協定の留保表に記載するということは、自由化型の協定の保障する参入の自由化に大きな障害になる、こういったおそれがあります。
そこで、この日・ミャンマー投資協定の留保表において、ミャンマーの会社法の規定の運用の実態を踏まえて、営業許可申請後、二十四時間以内に許可が付与される点、これを明記する、この点を確保した次第であります。
これによって、営業の許認可が恣意的に遅延されないこと、このことを法的拘束力を持つ形で担保することが実現できたというのがこの協定の意味合いであります。
○小川委員 ありがとうございます。
私どもは現在お尋ねをする側の立場ですので、心配な点あるいは至らなかったと思われる点を申し上げる立場であります。実際に交渉の場に臨んでおられる方々には、ちょっと私どもからは想像を上回る御苦労なり、御苦心なり、あるいは知恵の働かせどころなりというものがあろうと思いますので、そういうことに対しては十分敬意を払いたいと思います。
そういう意味では、今おっしゃったように、いろいろな知恵を相手国ごとに働かせて何とか協定の締結にこぎつけていくという努力はこれからも奨励されるべきことなんでしょう。ただし、まだ三十カ国余りという大変おくれた事態、状況にあるということを前提にすれば、どの国とどういう協定を結んだかは、今後拡大するに当たって、次なる交渉国から足元を見られかねないということもまたあるわけでありまして、そういったことも含めて頭に置きながら、引き続き、十分いろいろな角度から鋭意努力を進めていただきたいと思います。
これはもう指摘にとどめますが、もう一国のモザンビークとの間では、これはいただいた資料を見ますと、先ほどの話に戻りますが、早くから途上国を射程に置いていた中国、韓国との関係でいえば、日本は、アフリカ諸国はまだ真っ白ですよね。
恐らく、東南アジアだってそんなに何年も成長の時代は続かないと思いますよ。そして、地球上最後の成長のチャンスはアフリカということに恐らくなるんでしょう。
であれば、この真っ白なアフリカ諸国、今回モザンビーク一国でありますが、大変貪欲な姿勢で交渉を進めていく必要があると思います。その点、時間の関係で指摘にとどめます。
最後に、ちょっと大臣に胸をおかりしてお聞きしたいと思います。
先ほど鈴木委員が、商船三井の船舶の中国からの差し押さえに関して御指摘になられました。日中韓の投資協定が最近になって発効されたというふうにお聞きしています。御存じのとおり、日中、日韓との間には、戦前戦中の強制徴用、強制雇用の問題をめぐって訴訟に発展しています。
私の理解では、人道的には私もいろいろ思うところがあります、この方々の抱えておられる無念なお気持ちなりがもし晴らせるのであれば、何とか官民挙げてこれはその方向に協力できたらという人道的な思いは私にもあります。
しかし一方で、国際法的観点からいえば、日韓基本条約に伴う請求権協定、それから日中平和友好条約に伴う両国間の合意を前提にすれば、少なくとも法的には個々の損害賠償請求権はお互い放棄し、なかったことになるという取り扱いを前提に日本企業は当該相手国との間で企業活動をしているということになるんじゃないかと思います。
それからいいますと、後からはしごを外される形でこういう法的な損害、法的請求に直面するということは極めて遺憾な重大な事態であり、私が申し上げたいのは、投資協定の中身にもよると思いますが、国際仲裁、ISD条項を発動して、きちんとした仲裁を求めていく、あるいはその活路を研究するという日本政府の姿勢が中国、韓国に対する牽制効果を持つのではないかという気がいたしますが、一連の私の提案、問題意識に対してどうお考えになるのか、お答えいただきたいと思います。
○岸田国務大臣 日中、日韓の関係ですが、まず、中国との関係におきましては、日中間の請求権の問題、これは、日中共同声明発出後、存在しないというのが我が国の立場であり、中国側も日中共同声明を遵守するという立場、これは変わりがないと承知をしております。
強制連行、強制労働に関する訴えですが、類似の事案を誘発することにもなりかねないと影響を深刻に懸念しておりますが、引き続き関心を持って注視をしていかなければならないと思っています。
また、日韓の間ですが、財産、請求権の問題、これは日韓請求権・経済協力協定により完全かつ最終的に解決済みであるというのが我が国の立場であり、そして、韓国政府も、我が国同様、この日韓請求権・経済協力協定で解決済みという立場、これは今までも表明しておられました。
ですから、日韓の間にある旧民間人徴用工問題、これはあくまでも韓国政府自身が解決すべき問題であると考える、これが我が国の基本的な立場であります。
その上で、投資協定との関係の御指摘がありました。中国と韓国とは、それぞれ、日中投資協定、そして日韓投資協定を既に締結しておりますし、今月十七日には日中韓投資協定が発効しております。
中韓両国は、これらの協定に基づいて、我が国投資家の投資財産に対して十分な保護、保障及び公正、衡平な待遇を与える、こうした義務を負っていると考えております。
我が国としましては、こうした協定も踏まえながら、中韓両国に対して、我が国の投資家の投資財産が不当に侵害されることがないように、適切に対応していきたいと考えております。
○小川委員 歴史問題、歴史認識を含めて、私は衝突を回避すべきは回避すべきだと思います。しかし、法的にきちんとすり合わすべきはすり合わすべきで、現政権には、そこのめり張りに、力点の置き方に若干アンバランスがあるんじゃないか、私はそういう感想を持ちます。
加えて、きょうとにかく申し上げたかったのは、もはや日本は先進国の大国という地位、位置に甘んじていられる時代は終わったという認識がこれら全ての始まりではないかと思います。そのことを重ねて指摘させていただき、質問を終わります。
ありがとうございました。
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