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〜会議録(2014年4月16日外務委員会)〜
○小川委員 おはようございます。民主党の小川淳也でございます。
それでは、国際社会における知的財産権の問題等について御質問をさせていただきたいと思います。
ただ、大臣、ちょっとその前に、私、今回この五本の条約、協定が一括で審議されるということに若干違和感を感じておりまして、知的財産権関連の三条約と、それから漁業協定とか船舶のバラスト水の処理に関する協定、これは理事会でいろいろ議論があったのかもしれませんが、若干その点をお述べいただきたいと思います。
○岸田国務大臣 本日は、外務委員会におきまして五本の案件を御審議いただきます。知的財産権に関する案件三件と漁業等に関する案件二件をお願いしているわけでございます。これは、経済分野におきましてそれぞれ大変意義ある条約、案件であると認識をしておりまして、ぜひ精力的に御審議いただきますよう、外務省としましては心からお願い申し上げるところです。
知的財産権三件と漁業等二件の組み合わせにつきましては、これはあくまでも国会、委員会の持ち運びの問題でありますので、委員長を初め理事の先生方の御判断に委ねるしかないわけでございます。これはその検討の結果の御判断だと受けとめておりますので、我々の方からは、ぜひひとつよろしくお願い申し上げる次第でございます。
○小川委員 理事会で御決定いただくことだという前提ですが、恐らくその背景には、外務省から、こういうことでお願いしたいという依頼があったんだろうと思います。
もちろん、政府ですから、法案にせよ条約にせよ、一刻も早く国会での審議なり採決を進めていきたいということはよくわかるわけですが、一方、国会の立場としては、きちんとまとまりのある案件、それぞれ関連性の深いと思われる案件、もちろん、経済関係ということで一定理解いたしますが、今後のこともありますので、こうした少し違和感を感じるような取りまとめの仕方については、ここでちょっと一言指摘をさせていただきたいと思います。
その上で、知的財産権に関して、まだまだ国際社会の取り組みは、道半ばといいますか、相当おくれているのではないかなという気がいたします。特に、余り名指しで言うのはどうかと思いますが、よくテレビなんかでも、非常に痩せ細ったドラえもんが遊園地で出迎えているとか、あるいはにせブランド品も大変出回っているというような状況もございます。
今回の、特に意匠、いわゆるデザインだというふうにお聞きしておりますが、これに関する協定、条約の締結は、こうした国際社会に蔓延する知的財産権の侵害あるいはそれに対する脅威に対して真に有効打となるのかどうか、その点、大臣の御認識をお聞かせいただきたいと思います。
○岸田国務大臣 我が国が国際社会の中で活力ある活動を続ける、日本企業がその中で大いに力を発揮する、こういったことを考えますときに、知的財産権をめぐるさまざまな環境を整えることは大変重要な課題だと認識をしております。日本の企業の活動に付加価値を与え、そして国際競争力を確保する上で、こうした環境整備の重要性は言うまでもありません。
こうした認識のもとに、さまざまな国際的な取り組みですとか環境整備に努めているわけでありますが、今回、三本の知的財産権に関する条約をお願いしているわけでありますが、それぞれ、環境整備あるいはこうした知的財産権の保護、こういった点におきまして重要な条約であると認識をしております。
こうした一つ一つの積み上げによりまして、それぞれの権利が守られ、日本企業の活動がしっかりと促進され、そして日本の活力につながることを大いに期待したいと考えています。
○小川委員 関連して一つ。
地元の案件で恐縮なんですが、私の選挙区香川県は、讃岐うどんのメッカであります。今から六年前だったと思いますが、二〇〇八年ごろ、香川県の関連の業者の方が台湾におきまして讃岐うどん店を開店いたしました。ところが、その数年前に台湾の会社が讃岐うどんの讃岐という言葉を商標登録していたという事件がありまして、これは後に訴訟に発展する。これはまさに、今回はデザインを中心とした意匠に関する協定がメーンでありますので直接の関連ではありませんが、広い意味で知的財産権あるいは商標登録等といった国際問題、国際社会における一つの争訟事件に発展した事例があります。
これについて、その後、近年になって一定の解決を見たというふうにお聞きしていますが、事件の概要なりその経過、少し御報告をいただきたいと思います。
○石原大臣政務官 小川委員にお答え申し上げます。
御指摘の事案は、台湾において、今委員が言われたように、台湾企業の南僑グループが出願登録した讃岐等の商標の有効性が争われた案件でございまして、二〇一三年にこれらの商標の無効が確定した事案と承知しております。
問題の発生は、二〇〇七年に、今お話がありましたように、台湾でうどん店を営む日本人経営者が讃岐の二文字を看板に用いていたところ、南僑グループより、登録された商標に基づき、讃岐の二文字を看板から外すように要求されました。これに対して、日本人経営者は、台湾関係当局に対し、これらの商標の無効確認の訴えを提起いたしました。
一部は最高裁まで争われた結果、二〇一三年に、同商標は、商品または役務の性質、品質または産地について公衆に誤認、誤信を生じさせるおそれがあるものに該当すると判断されて、無効が確定したところであります。
○小川委員 当時、事件が争われているときは、私もいろいろと御相談を受けたり、しかしながら、残念ながらできることは限られているという中で、恐らく側面、背面から外務省さんのいろいろな手助けもあったんじゃないかなというふうに想像いたしております。先ほど御報告いただいたように、ひとまずこの事件については決着ということだと思いますが、国際社会におけるこの手の問題の基盤整備というのは、まだまだこれからなんだろうと思います。
ちなみに、商標に関する条約には台湾はまだ加盟していないというふうに事務的にお聞きをしておりますし、きょうの主要なテーマであります意匠、デザイン関連の国際協定も、まだ加盟国はわずかに四十六カ国というふうにお聞きしています。特に、日本企業、日本経済にとっても大変大きなウエートを占めるアメリカ、中国の超二大国がこの条約に加盟していない、この点は、条約に加盟することの実効性を担保する、実効性を上げていくという観点からいえば甚だ課題の多い状況だという気がいたします。
この点について、日本国の加盟はもとよりでありますが、特にアメリカ、中国、こうした国際社会の主要なプレーヤーが参加をしていただくというこの方向感について、大臣、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
○岸田国務大臣 先ほども申し上げさせていただきましたが、こうした知的財産権をめぐる環境整備を行うということは、我が国の経済の活力にとっても大変重要でありますが、国際社会におきましてこうした活力ある経済活動が行われるための環境整備という点につきましても、大変重要なことだと認識をいたします。そういった点から、御指摘のように、現在の国際社会において経済における大きなプレーヤーであります米国あるいは中国、こうした動向が大変大きな意味があるという御指摘はそのとおりだと考えております。
今回御審議をお願いしている条約につきましても、意匠の国際登録ジュネーブ改正協定につきましては、米国は、二〇一二年十二月、協定の義務を履行するための国内法改正案に大統領が署名を行ったところであります。したがって、米国は近い将来協定を締結するものと見られます。また、中国も協定の締結に高い関心を有していると承知をしております。
そして、意匠国際分類ロカルノ協定につきましては、米国は未締結の理由を明らかにしてはおりません。他方、米国は、協定で定める専門家委員会にオブザーバーとして参加しており、かねてから国際分類についての議論に積極的に参加している、こうした現状にあります。また、中国は一九九六年に既に締結をしております。
そして、もう一本の視聴覚的実演北京条約については、二〇一二年六月に採択されたものであり、採択後まだ間もないものであります。米国は締結に向けた検討を行っている状況であり、また中国は、条約の締結に必要な改正を含む著作権法の改正案を検討していると承知をしております。
米国、中国につきまして、御審議いただくこの三条約に関しての状況は今申し上げたとおりでありますが、ぜひ、こうした国の状況についてはしっかり関心を持っていきたいと思いますし、何よりも環境整備ということに関しましてはこうした大きな国の動向が大変重要であるという認識のもとに、我が国として、できる限りの働きかけ等、環境整備に努めていかなければならないと考えています。
○小川委員 ありがとうございます。
日本国が加盟することに関して大きな議論はないんだと思いますが、しかし、申し上げた実効性を上げていくという観点からいえば、国際社会共通のインフラづくりというのは非常に大事なんだろうと思います。
その観点で、先ほどの讃岐うどんの事例に少し絡むんですが、ちょっと突っ込んで提案なり問題意識をお聞きしたいことがございます。
今回の協定は、実効性を上げていくという意味では、主要国が入っていないことと、それから、手続を簡便にするという効果はありますが、実態面に入り込もうとすると、最後は二国間関係にならざるを得ないんだろうと思います。各国で登録がうまくいくのかどうか、あるいは先立って不正な登録が行われているのかいないのか。
お尋ねしたいのは、先ほどの讃岐うどん、台湾の事例に戻りますが、これは、今回の条約でいえば、新たなデザイン、あるいは新たな商標、新たな特許、新たな著作権を第三国で認めてもらうというのが主眼だと思いますが、さきの事例では、不適切な登録が先行して他国で行われていたことによって不便をこうむったという事案であります。
昨日、ちょっと事務的に通告いたしましたが、これから国際社会における知的財産権のインフラを整えていくためには、何か登録をしていくということも大事だと思いますが、先に不正な登録で占拠されてしまう、本来あいているべき陣地が先取りされてしまっているということを防いでいくことも一つのあり方ではないかと思います。
ちょっと事例になるかどうかわかりませんが、例えば、インターネットのホームページが普及していく段階で、早々と有名会社の呼称をアドレスで登録した人たちがいました。それは後に不適切だということで売却されたり、あるいは明け渡されたりという事例があったと思いますが、これに近い事例かもしれません。
悪意があるのか、故意であるのかはわかりませんが、独占、占有することが不適切と思われる名称あるいはデザイン、いろいろなものが先取りになって登録されているという事態を事前に防ぐということも含めて、今後、国際社会の中では考えていく必要があると思いますが、この点について御見識をお聞かせいただきたいと思います。
○磯崎大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。
讃岐うどんの商標について、うどん県出身の小川委員が質問されて、うどん県出身の私が答えるというのは、非常に縁を感じるところでございます。
外国において出願、登録をされた日本の商標が無関係の第三者によって先に外国で登録をされて、そのことによって正当な権利者がいろいろな意味で害されるということにつきましては、防いでいかなければいけないというふうに思っております。
そういった意味では、経産省としましては、まず、台湾におきましては、正当な権利者がきちんと相談できるような窓口を設けているということとともに、もし侵害があった場合にはそれに対してどう対応していったらいいのかというマニュアルをきちんと整備しまして、正当な権利者に配付するという対応をとっております。
今回の讃岐うどんの商標の件につきましては、登録の取り消しを求める日本の工商会の台湾当局に対する活動を私どもも支援してまいりましたし、また、台湾当局に対しまして地名等のリストを提出するということによりまして、先ほど外務省から話がありましたように、今回の登録商標につきましては取り消しがなされたということでございます。
そして、委員御提案のように、これから、先に登録された商標に対して、正当な管理者、権利者がどう防いでいくかということにつきましては、これはやはり、そのこと自体、まずきちんと登録されないように何かできないのかということがあろうかと思います。
これにつきましては、特に漢字文化圏につきましては、中国、台湾という国があるわけでございまして、こういった国につきましては、例えば、漢字の讃岐でありますとか都道府県の名前、あるいは地域団体商標等につきまして、事前に、こういうリストに入っているものについては登録を差し控えてもらいたいという、審議に当たって十分に考慮していただくような、そういったやりとりをお互いの国同士でやっていくということを、今現実、中国と韓国については行っておりますし、台湾につきましては日本工商会の方から提出をしておりましたけれども、これを政府間でできるのかどうかということにつきましては、可能性を検討していきたいというふうに思っております。
また、ローマ字等につきましても可能性としてはある話でございますので、その可能性についてもこれから検討してまいりたいというふうに思っております。
○小川委員 ありがとうございました。
最終的に二国間関係に置けば置くほど、手間もかかるし、コストもかかるし、それだけ損害も大きいということだろうと思います。こういう多国間条約をいかに実効あらしめるかという意味では、先ほどの予防的な観点の議論もぜひ頭の片隅に置いていただきたい。
最後に、ちょっと逆の観点からお尋ねします。
今回、俳優さんのパフォーマンス、演技等について、二次利用されない、そういう意味での知的財産権を守るという協定も含むわけでありますが、逆の観点からお尋ねします。
最近、これだけ日韓関係が難しくなっているにもかかわらず、依然テレビドラマでは、いわゆる韓流ドラマが、言葉は悪いですが、本当に垂れ流し状態とも言えるぐらい大変な露出の中にあります。一方、データをいただいたところですと、日本のテレビドラマ、なかなか見応えのあるいいコンテンツが多いと思いますが、海外で受け入れられている、あるいは放映されているのはその半分にも満たないと言われています。ここには、俳優さんの肖像権等を含めた知的財産権の扱いが異なると言われています。
お尋ねします。
俳優さんの知的財産権も大事でしょう。しかし、国策として、こうした日本のソフト、コンテンツを積極的に海外に展開していくということもこれまた大事であります。この辺の、契約慣行、商慣行を含めて、推進する立場からの議論が必要だと思いますが、この点の御答弁をいただいて、質問を終えたいと思います。
○上川副大臣 お答えをいたします。
委員御指摘のとおり、放送コンテンツの海外展開を促進するに当たりまして、放送コンテンツの二次利用に係る権利処理の円滑化が極めて重要であるということでございまして、総務省としましても、具体的な取り組みを進めているところでございます。
まず、二次利用に係る実演家、パフォーマーの権利処理手続ということでありますが、これまで、窓口が大変複雑で、実演家ごとに所属団体を調べて申請するという必要があったと同時に、申請手続そのものも電子化されていないということがありまして、極めて煩雑、また時間を要していたということでございます。
平成二十一年度にaRmaという映像コンテンツの権利処理機構を設立いたしまして、順次この窓口機能の集約化を図ってきたところでございまして、この成果は着実に上がっているところでございます。
また、近年、アジア各国で番組を販売する際には、日本での放送直後に海外で放送できるような形態での販売が大変ニーズがございまして、これに対しては、放送局あるいは権利者と調整の上、放送後に海外での販売に係る権利処理というのをするのではなくて、初めから海外での販売を想定した暫定的な権利処理ルールを定め、そしてそれにのっとって、試行的な取り組みをことしから始めたところでございます。
こうした取り組みを通じて権利処理の手続を一層促進しまして、放送コンテンツの海外展開を一層進めてまいりたいというふうに考えております。
○小川委員 ぜひ積極的な取り組みをお願いしたいと思います。ありがとうございました。
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