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〜会議録(2011年12月7日外務委員会)〜
○田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川淳也君。
○小川委員 おはようございます。民主党の小川淳也でございます。
たっての希望で、初めて外務委員会に所属をさせていただきました。委員長初め、理事の皆様、また委員の皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。
また、大臣におかれましては、御就任から三カ月、大変目まぐるしい中を御勤務に精励されていることと存じます。心より敬意を表し、まだまだこれからではございますが、ひとまずこの時点において心より御慰労を申し上げたいと思っております。
少し、これは触れないわけにまいりませんので、簡潔に触れさせていただきたいと思いますが、この間、外務委員会での主要な議題は原子力協定でございました。きのうまでで本会議の採決を終わった。ただ、党内の対応も含めて、さまざま議論になっていることは事実でございます。この点、衆議院においてはもう議了済みでございますので、事の是非についてはもはや議論いたしませんし、参議院での議論を見守るというのが正しい姿勢だろうと思います。 ただ、閣僚の一人として、ぜひお気持ちにとめていただきたいのは、原子力行政にかかわらずでありますが、やはり国内政策と対外政策との一貫性、調和感あるいは一体性、こういうものについては、日本国政府としてやはり整えていく必要があろうかと思います。そういう意味で、ぜひ、今回のことを一つのきっかけとしまして、そういう面でも、ある種の責任が日本政府に生じていることも含めて、ぜひお気持ちのどこかに置いていただければと思います。
大臣には、野党時代から、特に国内政策、地域主権改革等で大変御指導いただいてまいりました。国際舞台で活躍される大臣を拝見するのも、何といいますか、非常に魅力的な部分がございまして、ただ、私も外交に関してはほとんど知識とか経験が十分ではありませんだけに、きょうはちょっと胸をおかりしたいんですが、この三カ月、今週だけとりましても、ロシアの国内選挙、それから、きょう総理の訪中が延期をされるような報道がありました。また、大臣はミャンマーを初めとしたアジア諸国を訪問される予定ということも報じられております。また、党内外ではTPPをめぐる議論がありました。それから、APECやASEANなどの多国間会合、また当然、数え切れないほどの恐らく二国間の外交、こういうことを三カ月、精力的にこなされたわけであります。
その間、非常に漠然としたお尋ねで恐縮です、外交に関して大臣なりの何か哲学といいますか、思想といいますか、外交理念のようなもの、何かこの時点で到達されたものがございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
○玄葉国務大臣 本当に小川さんとは国会に出馬をされるときからの強い縁があって、こうして外務委員会でやりとりができることを大変うれしく思います。
その上で、今の御質疑でありますけれども、私は外務大臣になったときに、余りこれまで使ってきた表現ではないんですけれども、大言壮語するよりも実のある外交をしたいというふうに胸に秘めながら行ってまいりました。
同時に、内向き思考にどうしても今の日本はなりがちでありますので、その内向き思考から私の在任中に脱却できるというような状況をつくりたいと。例えば、具体的に言うと、これからでありますけれどもODA予算の反転とか、そういったことも含めて、胸に秘めながらやってきたところでございます。
さらに、まず、やはり日本の繁栄というのは、あるいは豊かさというのは、アジア太平洋とともにあるというのも現実だというふうに考えておりまして、この間、私が意識をしてきたのは、このアジア太平洋の中で、まず米国がアジア太平洋にしっかりとコミットするという状況をつくることと同時に、あわせて、やはり世界第二位、第三位の経済規模を誇る日中が、お互いに経済関係を強化しながら、地域の問題そして世界の問題に対して、ともに建設的な役割を果たしていくという方向に持っていくために、どのような環境をつくっていけばいいのかということで、ASEANの外交を含めて、この間展開をしてきたというふうに御理解をいただければと思うんです。
私は、就任会見のときに、何が一番大切ですかと言われて、東アジアのリスクを最小化して成長の機会を最大化することであるという言い方をいたしましたけれども、やはりこのアジア太平洋の中で民主主義的な価値に支えられた豊かで安定した秩序をつくる。その場合の民主主義的な価値というのは、決して価値の押しつけということではなくて、やはり日本という国は、これまで独自の文明、文化というものを持ち、またアジア的な価値観を持ってきた中で、このアジアの中で最初に民主主義的な価値というものを取り入れたわけであります。そういう意味で、日本にはやはり独自の役割というものがあるという考えのもとで、今申し上げたようなことを意識しながら、例えばEASなどでのルールの確認などなど行ってまいりました。
また、部分的に言えばさまざまございます。例えば、日米の地位協定の運用改善を初め、きずなを深めるためのこれまでの対話あるいは交渉、それぞれやってまいりましたけれども、ざくっと言えば、そういう意識を持ちながら、この間外交活動を行ってきた。
したがって、経済連携についても、TPP初め、それぞれの経済連携についても積極的に推進をしてきた。それは冒頭申し上げたように、東アジアのリスクを最小化して成長の機会を最大化するということは、やはり極めて大切であるというふうに考えたからであります。
長くなって申しわけありませんが、そもそも、やはり私は、外交というのは国益を最大化すること、そして成長の機会も最大化すること、そして国際社会の平和と繁栄に貢献をする。それは、国益と国際公益というものを常に重ね合わせながら、しっかりと国際社会の繁栄と平和にも貢献をしていく、プレゼンスも強化をしていく、そういうことを意識しながら、この間、外交活動を展開してきたつもりでございます。
○小川委員 ありがとうございました。内向きからの脱却、アメリカとの関係、中国との関係等々、お話しいただきました。
大臣の所信会見の中で、孔子の兵と食と信というお話をされていることを大変心強く思いました。多分、私も十分な見識を持ち合わせるには至っておりませんが、古典的には、軍事力、経済力、そして価値という三つの要素を駆使して、国際社会の荒波をくぐり抜けていくということだろうと思いますが、そういう意味で、私は、最近特に心に残りましたのは、やはりブータン国王の来日でありました。
もちろん、若い国王、そして新婚間もなくという状況であり、歓迎ムード、祝賀ムードはこれ以上ない状態であったわけですが、それにしても、なぜ人口七十万人の、大変失礼な言い方かもしれませんが、世界でいえば小国です。その国王の来日に対して、あそこまで日本国民が注目をし、国会の演説も耳を傾けて、最近自信を失いがちな私たち日本人にとって、久々に、近年まれに見る名演説といいますか、非常に励まされる。涙ぐむ国会議員が多かったと聞いていますが、私もその一人でありました。
あの存在感を考えれば考えるほど、やはりこれからは、もちろん経済力は大事です、軍事力も前提になるでしょう。しかし、国際的にいかなる価値を提供する国家であるのか、そこを、あの経験に照らして、みずからをしっかり振り返る必要があるような気がいたします。
大臣、お疲れだといけませんし、山口副大臣、即答でもよろしいですか。ブータンの魅力は何か、そして日本はあの経験からどういうセールスポイントを掲げていくか、御見識を伺いたいと思います。
○玄葉国務大臣 私も、あの国会演説、もちろん宮中晩さん会初め、国王御夫妻とは何度お会いしましたか、三度以上は、四度ぐらいお会いしたというふうに思います。やはりあの国会の演説を聞いて、まずは、今、小川さんが言われたように、非常に親愛の情にあふれる国会の演説であった、そして日本人、日本国に対する敬意というものを非常に感じました。多くの恐らく国会議員が、あるいはあの演説を聞いた日本人が、日本人としての誇りというものを改めて感じさせてくれるような演説をされた、そして、すべてにおける立ち居振る舞いの立派さというものに対して、多くの日本人が感動したのではないか。
お尋ねの、価値の話も含めて申し上げれば、私自身も三・一一を地元で経験して、確かに自分の価値観とか人生観が変わりました。それは、幸せとは一体何だということを感じたんですね。国民総福祉とか国民総幸福量とか、そういう概念をみずから説明されて歩かれたということに対して、さまざまな意味で転換期にある日本人に対して、やはり心を打つものがあったのではないかというふうに感じます。
○小川委員 おっしゃるとおりだと思います。
先代国王も恐らく立派な方だったんだと思いますが、GNHという、国民の総幸福量という概念を打ち出したことそのもの、また王制でありながらみずから民主化にかじを切る、恐らく世界史上まれに見る変化をみずから遂げられたんだと思いますが、そういう、国際社会にボリュームとかスケールではない価値を示した。
私は、日本はこれから先、恐らく今後も世界最長寿の国であり続けるし、あり続けなければならないと思います。どういう先進モデルを世界に示せるか、そして人口が減る中にあって、いかなる気構えと具体の政策で交流を拡大し、国の活力を維持するか。そして、大臣のお地元でも本当に今苦労されている方はたくさんおられますが、世界的なエネルギー、環境技術の革命期にあって、日本がいかに最先端を走るか。こういう点で、やはり世界に価値を高らかに示す国、こういう姿をぜひ夢見て、この政治の世界で頑張りたいという気がしております。
国益を主張するということは、政府として極めて重要です。しかし、ともすると、ややトーンが下がりがちなのは、先ほど来のお話にもありますとおり、国際公益にいかに貢献するか。国際公益への貢献こそが実は最大の国防であり、最大の国益であり、価値であるということも、ぜひあわせて発信をしていただきたい。
関連で、その文脈で具体的にお尋ねしたいんですが、今、欧州危機が大変な状況にございます。日本として、これにかかわるのか、かかわらないのか、どの程度かかわれるのか、かかわれないのか。きょうは、三谷政務官、財務省からお越しいただきました、ありがとうございます。この欧州危機をどう把握しておられるか。
そして、もう時間もあれですので、具体的に。EUが発行しようとしております欧州金融安定化基金の発行債券の、どの程度の割合に対して日本は貢献しているのか。これはまさに国益と国際公益が円高問題を絡めてぶつかり合うテーマだと思いますが、現時点における財務大臣政務官としての御見識をお聞かせいただきたいと思います。
○三谷大臣政務官 今欧州で起きている債務危機問題は、これは決して、我が国として対岸の火事と眺めるわけにはいかないと思っています。ただ、欧州の財政問題に関しては、やはり基本は、市場の信認を回復するために欧州みずから取り組んでいくことが重要である、これが基本であると考えております。
また、御指摘のEFSF債購入については、これは御承知のとおり、起債のたびに一部買っております。約一〇%程度であります。今御指摘の話は、それを買い増してはどうかということだと思いますが、それは、欧州のみずからの取り組みを見きわめながら、また外為特会の保有するユーロの流動性や発行条件等を総合的に勘案しながら検討を進めてまいりたいと思っています。
○小川委員 ありがとうございました。
大臣、ぜひ数字を少し御紹介させていただきたいんですが、今、三谷政務官が御説明になった欧州安定化基金の債券の発行残高、ざっと計算で、日本円で一兆五千億です。日本がそのうち持っているのが三千億ぐらいですよね。外為特会の日本の資産は百兆円を超えています。百兆円を超えているうちの三千億です。 そこで、私が申し上げたかったのは、国益だけを考えれば、この異常なまでの水準の円高を是正するために思い切って介入をし、欧州安定化基金債を大胆に買えばいい。
しかし一方で、きょうはあえて資料をお配りさせていただいたんですが、これは、外貨準備高が各国政府のGDPの大体どのぐらいを占めるかという、これも余り、恐らくは知られていない数字です。中国と日本のGDPはほぼ匹敵している状況ですが、中国の外貨準備高はGDPの五〇%に到達しようとしています。日本は百兆円ですから、大体二〇%。ロシアや韓国が三〇%前後。ところが、欧州、ドイツ、フランス、イギリス、上から四番目以降にありますが、一けたです。つまり、これは当然、国際社会の反発も含めて、やり過ぎますと大変な批判にさらされますし、これは経済途上国であることの証左にもなりかねない。この点も注意する必要があります。
しかし、国益と国際公益への貢献、時に背反するでしょう。しかし、いかに両立させるか。今回、私は、この欧州安定化基金の債券の大胆な買い取りなり積み増しは、国際貢献の名のもとに、一部国益もにらむ。そういう議論をするに当たっては、極めて議論としては重要な議論ではないかと思います。
加えて、特に先進国向けの融資の機関として、いわゆる国際協力銀行ですか、JBICと言われる機関があります。ここが約十兆円前後の貸出残を持っています。今回、政府は、円高対策の名のもとに、十兆円規模に基金を積み増し、その融資枠を拡大するという政策をとられました。私は、これは大いに歓迎すべきことだと思います。しかし一方で、JBICの資本金が一兆円前後しかない。そうすると、自己資本比率との関係で、これ以上の拡大が難しいという制約があります。貸出残十兆円に対して、一兆円の自己資本です、ざっとした計算ですけれども。
一方、途上国向けに、まさに大臣が冒頭おっしゃいましたODA予算の関連で、円借款を実施している機関としてJICAがあるわけです。 これは外務省の事務方で結構です。JICAの貸出残と自己資本の厚み、事実関係を御報告いただきたいと思います。
○越川政府参考人 お答え申し上げます。
資産、貸付金残高は十一兆五百十一億円、これは二〇一〇年末のバランスシートでございます。そのうち、資本、純資産、民間で言う資本でございますが、八兆五千六百九十一億円でございます。
○小川委員 ありがとうございました。
大臣、今お聞きのとおりでございまして、片やJBIC、先進国向けは、貸出残約十兆に対して自己資本一兆、自己資本が薄いがためにこれ以上融資枠を拡大できないという制約に直面しています。片や、途上国向けのJICAは、約十兆、同じ程度の貸出残に対して、八兆円を超える自己資本を抱えている。
これを外務大臣として、先進国向けも大事でしょう、途上国向けも大事でしょう、国内の限られた資本を最大限有効に活用し、円高対策を含めた国益の追求と、そしてそれに余りある国際公益への貢献、この両立をいかに図るか、いかにバランスをとり直すか、極めて重要な観点だと思います。
これは事務方で結構です。このままを前提にすれば、自己資本との関係でいえば、途上国向けの円借款を大胆に拡大すれば、それは国際公益への貢献であり、なおかつ円高対策を含めた国益の追求でもあると思いますが、これはできないんですか。
○越川政府参考人 円借款につきましては、財務の健全性を維持しつつ、その着実な実施にこれまでも努めてきたところでございます。
なお、債務負担能力のある国という条件もございますので、そういう債務負担能力のある途上国につきましては、今後とも拡大あるいは一生懸命やっていきたいと考えてございます。
○小川委員 恐らく、相手国のリスクの関係、また、先進国であれば、特にニーズがあるのかないのかも含めて、さまざま事情は難しいと思います。しかし、重ねて申し上げておりますとおり、いかに国際公益に貢献しつつ、しかし国益を、実はという言い方が当たっているのかどうかはわかりませんが、追求していくか。
今まで日本は長らく成長期にありましたし、資源も余りあるものがありました。しかし、これから人口も減り、高齢化も進み、今までの思考回路で同じことを同じように続ける限り、この国に繁栄と、そして国際社会における存在感は大幅に薄れていくでしょう。
今の、例えばですが、JICAとJBICのこのアンバランス、これを生かすのか、それとも是正するのかも含めて、大臣の大局的な御見識、御判断を最後にお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
○山口副大臣 端的に。
例の円借款の場合には、逆ざやということで、貸し出すときには金利を安く、それから調達するときには金利は高くということもあって、そういう意味では自己資本をきちっと持っているということだと思います。
JBICの場合には、いろいろこれから、ある意味で投資的な意味を持って、民間の出資も助けたりということだと思いますので、そこは若干違うと思うんですけれども、ただ、小川議員の言われるとおり、これから日本が世界のプロジェクトにきちっとサポートしていく、そんな中で、それが実は円高対策にもなっていく、それがまた将来、通貨の是正がなされる場合には大きな利益となって返ってくるということも踏まえて、長期的な観点からいろいろと相談させていただきたいと思います。
○玄葉国務大臣 まず、冒頭指摘をされた少子高齢化、環境の問題。私は、世界に先駆けて、この問題について、例えば少子高齢化もそうなんですけれども、真っ先にやってきているのが日本です。一方、例えばお隣の中国は二〇一三年から労働力人口が減少し始めるわけですから、真っ先に解決してみせるということ、そのこと自体がまずは日本の世界に対する大変な貢献であるというふうに思います。
それと、これからはお金を使うだけではなくて、やはりさまざまな構想を日本自身が示していく。そういう意味では、例えばEASでのルールづくりなどもそうだし、低炭素成長パートナーシップもそうだし、ASEANの防災のネットワークも日本自身が提案しています。
さらに言えば、人間の安全保障というのは、これは自民党時代からでありますけれども、これはもともと、オリジナルは日本ですね。私が外相になってさまざまな会議に出ていくと、この人間の安全保障というのはますます光輝いているというふうに思いますので、そういった国際公益と国益を重ね合わせながら、構想力を持って取り組んでまいりたい。
今のJBICとJICAの話は、私自身も問題意識を持って、これからよく注視をしたいというふうに思います。ただ、さっきの山口副大臣の答弁にあったように、金利の話は、また金利が上昇したらどうするんだ、率直に言うとこういう問題もございますので、そういった点も見ながら、また、欧州危機は、まずは欧州が克服してみせる、その気概を見ながら当然我々も必要な協力は行っていくということでないと、日本自身にだって、これは国際公益というよりは、日本自身の国益にも直接つながってくるというふうに考えていますので、そこのところは十二分に留意しながら対応していきたいというふうに考えております。
○小川委員 ありがとうございました。
私にとりましては本当に有意義な議論をさせていただきました。
大変ハードな外交日程、また年末も押し迫っております。くれぐれもお体に御留意をいただき、事務当局の皆様も含めて、日本外交のためにさらなる御貢献をいただきますこと、また、私どもとしても、それをしっかり応援をしてまいる決意を申し上げて、終わらせていただきます。
ありがとうございました。
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