民主党 衆議院議員 小川淳也
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〜会議録(3月24日総務委員会)〜

○小川(淳)委員  民主党の小川淳也と申します。大変長時間の御審議、お疲れさまでございます。

 福地会長には、私、実は昭和四十六年生まれでございまして、会長がアサヒビールに御入社されてから十四年後に生まれました。やはり小さいころからもうカラーテレビが目の前にありまして、テレビとともに育ちました。小さいころは、おじいさんがいつもNHKのニュースをかけているんですよね、それが嫌で嫌でしようがなかったんです、私は漫画を見たいとかいろいろな思いがあるのに。ところが、だんだん年をとってきますと、NHKのニュースとか教養番組というのはすごく波長が合うな、何か不思議な感じがしております。

 今回、六千五百七十億円の予算でありますが、少しわかりやすい数字からまず、経営委員長そして会長にごらんをいただきたいなと思いまして、いただいた資料の中からあえて抜粋してまいりました。委員長にお許しをいただいてお配りをさせていただいております。

 六千五百七十億円、まさに準税金といいますか、税金に近いお金でいろいろな番組をつくっておられる、これは興味深い数字だなと思いました。例えば「ためしてガッテン」、一本当たり一千六百八十万、「世界遺産」、二千三百万、話題の「篤姫」、一本当たり六千万近い費用ですか、「おかあさんといっしょ」になりますと、一本当たり三百万ぐらい、こういうことだそうです。

 一枚おめくりいただきまして、直近の一週間の視聴率、最近報道されておりましたので抜粋してまいりました。堂々たる一位は「篤姫」、二四・七%。以下、六番目には「ちりとてちん」、朝のドラマですか、そして「ニュース7」が十番目等々、NHKの番組というのは大変上位にもランキングしております。一方、上位二十傑のうち、フジテレビが七つ、日テレが五つ、TBSが三、テレビ朝日が二ということで、確かに民放のランキングインも非常に多い状況にございます。

 あわせて、委員長、会長には、御存じかどうかあれですので、若干御紹介申し上げたいと思いますが、NHKは今回六千五百七十億円の予算でありますが、フジテレビさん初め同業他社さん、テレビ朝日が連結ベースで大体二千五百億ぐらいだそうですね、売り上げが。日テレは三千四百億、ちょっとこれは口頭で申し上げていますが、フジテレビがほぼNHKに匹敵するぐらい、六千億近い予算だそうです。しかし、その中で人件費、NHKの人件費は一千八百億、約三分の一が人件費という計算になります。しかし、フジ二百億、日テレ九十億、テレ朝九十億、非常に人件費あるいは償却を持たずに全国のネットワークを使ってやっているというのが実態かと思います。

 さて、ちょっといろいろ紆余曲折いたしましたが、私は経営委員長そして会長に大変期待をする人間の一人であると同時に、やや心配もしております。その観点から率直にお尋ねします。

 まさに古森委員長は総勢七万六千名を擁する富士フイルムグループ、ネガフィルムからファインピクセルですか、非常にもう企業イメージすらを変えられたぐらいのすさまじい経営手腕を発揮されました。また、福地会長におかれても、アサヒビール、あのスーパードライの伝説というのは本当に日本経済現代史に残るような、神話のような活況ぶりだったかと思います。

 お二方にあえてお伺いしたいのは、富士フイルムで経営されてきた経営手腕と、今度NHKの経営委員長として最高責任者たるお立場におられることとで、何が同じで何が違うか。アサヒビールにお勤めになられた福地会長、何がアサヒビールと同じでNHKは違うのか。その二点、それぞれお答えをいただきたいと思います。

○古森参考人  お答え申し上げます。

 NHKには企業体といたしまして二つの側面があると思います。

 一つは、公共放送として、良質の番組を提供して、正しい情報あるいは良識の核となるような考え方とか、こういうもの、あるいは文化芸術、広く公共放送として利害ベースに立たないで提供するという側面がございます。

 いま一つは、国民の皆さんから受信料をちょうだいしているわけでございますから、当然効率的に使わなきゃいけない、無駄遣いしちゃいけない、効率経営、二つの側面がございます。

 私は、その効率経営の側面で特にNHKに寄与したいというふうに考えておりますが、一方、民間の経営も、何もただもうかればいいということではありません、効率的経営をすればいいというわけではない。お客に、NHKの場合は視聴者に、何を提供するか、どういう価値を提供するかということで対価を得ているわけで、そういう意味では、我々は物をつくって売りますが、価値を提供するわけでありますが、NHKは良質の番組を提供して、そういう価値を提供して受信料をもらうという面では、全く同じだというふうに考えております。

 以上、お答え申し上げます。

○福地参考人  NHKに参りましてまず感じましたのは、前職との違いは、前職は嗜好品でございますので、一〇〇%あまねくということは関係ございません。今度は、好きな人だけ飲んでくださいというわけにはまいりません。視聴者は全員、全世帯からいただいておりますので、あまねく方々に放送、いい番組をお届けするという責任が根本的に違うかと思います。

 二番目に感じましたのは、ステークホルダーズの違いでございまして、前職のときには株主、アナリストというのがございまして、それに社員と顧客という、近隣関係もございますけれども、主に言えば三つのステークホルダーでございまして、NHKの場合には株主はございませんで、視聴者と職員という、ステークホルダーが二つの違い、これが二点目でございます。

 三番目は、競争構造が違う。もちろん、NHK、公共放送としての立場と民放との競争はございますけれども、競争構造は根本的に違うという感じがいたしました。

 三つ目の観点は、今、民の分野ではほとんどがグループ経営ということで、グループ視点ということが大変重視され、グループとしての最大効率を発揮するということが求められております。NHKの場合も今それを志向しつつありますけれども、そこまでに至っていない。先ほどから御指摘の点もございましたけれども、そういった点が主に違う点かなというふうに考えております。

 以上です。

○小川(淳)委員  大変ある意味ではいいお答えをいただいたなと思います。

 お二方がお話しになった観点の中で、一つ抜けるかなと思いましたのは、やはり放送に関する専門性ですね、これをひょっとしたらお二方が一番自覚しておられるかもわかりません。

 ちなみに、よく比較の対象になりますが、イギリスのBBCでは、経営委員会に当たります経営トラストが、地方自治の専門家でありますライオンズ委員長、そして会長にはBBC御出身のトンプソン会長ということだったようです。その意味では、きょう御出席になっておられますが、今井副会長のお仕事ぶりといいますか、お二方を補佐しながら放送の専門性を十分に発揮していただくという意味では、お三方にぜひ今後のNHKのさまざまなバランスのとれた経営、ぜひ御期待をこの場をおかりして申し上げたいと思います。

 少し各論で幾つかお尋ねいたします。まずインサイダー取引について、時間の関係で何点かまとめてお尋ねいたします。

 三名の職員が百万円を超える利益を得たそうでありますが、課徴金が四十九万円、その半分を取り上げたにとどまっているようであります。この点も含めて、今後の処分をどうされるのかが一点。

 あわせて、現在、懲戒休職という扱いにこの三人はなっておるようですが、この職員に対して給与の六割をなお支給しておられるという点、これは、NHKの信頼性なりといった観点から、国民の理解を得られるものであるかどうか、その点に関する認識。

 三点目。内部五千名、外部三千名の約八千名がアクセスできたと言われるこの種の特だね情報、この特だね情報にアクセスできる職員を五千名から三千名に絞ったというお話をお聞きしておりますが、なお大変大きな数字、恐らくコントロール不能だと私は思いますが、これで十分とお考えになっておられるかどうか。

 最後に、株式取引については、もちろん今、第三者委員会で議論していると思いますが、既に、日経新聞、日銀、そして経済産業省を初めとして、問題が起きたところでは、職員への報告義務を課すなど、より先進的な対処をとっておられます。NHKは、公共放送としてむしろ他の民放に先立つ形でこの辺は厳しい姿勢を打ち出されるべきかと思いますが、以上四点、お答えをいただきたいと思います。

○福地参考人  まず、懲戒休職の考え方でございますが、当初は単なる休職でございまして、単なる休職にいたしますと給料を払う格好になります。したがって、給料を減額するという方向で検討いたしますとき、本来は処分をしてしまえばいいんですが、第三者委員会の方から、第三者委員会の結論が出るまで本人の処分は待ってほしいというふうに言われております。その中で、報酬を減額しながらという工夫をいたしました結果、この三人の問題が懲戒に該当する、その場合には懲戒休職というものが充当できるというふうな社内規定がございますので、しばらくの間でございますけれども、そういった処置をいたしたわけでございます。

 二番目のアクセスの問題ですが、本来はもっと減らすことが必要なんですが、いずれにいたしましても、これは、番組、報道をつくり上げていくためにはゼロにはならない。ゼロにはならない段階でやはり同じ問題が起こってくる。

 私は、今度の問題が起こりましたときに、アクセスする人が五千人もいる、数千人いるというのも甚だおかしいことだと思いましたけれども、それ以上におかしいと思ったのは、アクセスした人をチェックできないという方がもっとおかしい。何時何分にだれがこの情報にアクセスしたんだということがわかりますと、予防措置にもなりますし、その対象者が絞られてきます。

 そういう仕組みがあったんですが数日で消えてしまうということで、インサイダー問題というのは、本件もそうでございますが、一年たって出てきた、少なくとも一年、二年の間、そういう情報が確保されていなければいけないということで、これは即日、すぐ直しました。今は、この情報にだれがアクセスしたか、何時何分の何秒にアクセスしたかということがわかる体制にいたしました。これで随分と予防措置になるというふうに考えております。

 三番目の株取引の問題でございますが、いろいろなお考えがございまして、最終的には第三者委員会の再発防止策に従いたいと思っております。しかし、その前の段階で、一般職員は六カ月の短期売買をやめようということにしたのですが、上に行くほど厳しくしようということで、私たち会長、副会長は六カ月株取引はゼロでございます。そういったことにしております。しかも、この六カ月以内ですが、報告義務を付するようにしております。しかし、これは暫定的な措置でございまして、いずれにいたしましても、第三者委員会の再発防止策の結論が出ましたら、それに従ってまいります。

 なお、六カ月というのはやみくもにつくったわけではございません。これはやはりメディア各社のいろいろな尺度に合わせまして、参考として当面つくった再発防止策でございます。

 以上でございます。

○小川(淳)委員  実は、国家公務員の懲戒に関しても、刑事起訴された場合には百分の六十以内で給与を支給できるという規定がございます。あくまで百分の六十以内なんですね。ですから、そこは世の中のNHKに対する厳しい目をよく勘案いただきたいということを重ねて申し上げたいと思いますし、取引の報告義務を課すことができれば、もちろん記録が残ることも大事でしょうが、これは予防措置としては最も進んだ、経済産業省並みのやり方でありますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 あわせて二点、お尋ねします。

 ちょっと時間の関係で端的にお尋ねいたしますが、中期計画で、三年間で一〇%の人員削減を実施したい、千二百名の人員削減を実施したい、どうもこれは達成されつつあるようです、十八年度、十九年度、二十年度で。しかし一方で、今社会問題化もしておりますが、非正規雇用形態でのNHKの職員の数がふえているというデータを少し散見いたしますが、この点に関する御認識。

 そして、この六千五百七十億円、ほとんどが受信料でありまして、受信機は今や、もはや、これからまさに、さらにそうでありますが、テレビとは限りません、携帯電話やパソコン、あるいは録音録画機ですか、多様な受信機に応じて受信料契約をちゃんといただいているのかどうか、把握をすべきだと私は思いますが、これは全く異なる点ですけれども、二点まとめてお答えをいただきたいと思います。

○福地参考人  現在、千二百人の効率化を進めております。ことし二十年度が三年目に当たりますが、その減員を非正規雇用に置きかえているものではございません。

 NHKの業務につきましては、職員だけでなくて、関連団体への業務委託とか制作プロダクションなどの活用等、さまざまな形で行っております。NHKにおけるスタッフ、派遣労働者の非正規雇用は、ここ数年、一定規模、二千八百人前後で大体推移をしておりまして、千二百人の要員減員が非正規雇用の増加にそのままつながっているというふうには、現在のところは見受けられません。また、スタッフ、派遣労働者とは定期的な個別面談の実施やコミュニケーションを密にいたしまして、日常的にも適正な雇用、業務管理に努めております。

 二番目の、各御家庭で携帯電話やパソコンを含めて受信機の設置台数や種類といったデータは、まだ私どもとしては把握しておりません。ただ、世帯の受信機所有状況の調査といたしまして、NHK受信実態調査をサンプリング調査で行っているという段階でございます。

 以上でございます。

○小川(淳)委員  受信料の収納率が現在七割ということですから、これは高めていく必要があろうかと思いますし、その際、携帯電話で受信している方、あるいはパソコンで見ている方、こういう方について、こういう状況ですということも説明できないと、これは説得力を増すことができないと思いますよ。改めて御指摘を申し上げたいと思います。

 それから、非正規雇用に関しては、こういう数字がどうもあるようです。直近四年間で五百名余りの職員が減らされている、減少している。一方で、派遣職員が三百五十名ふえているということもあるようです。もちろん、こういった部分を通じて効率化ということはあるんでしょうが、やはり公共放送ですから、その体質そのものから、単に合理化、切り捨てといったようなことにはならないように、改めて注意を喚起しておきたいと思います。

 最後に、受信料、例えば、さっきBBCの例を引き合いに出しましたが、BBCは何と日本の倍、三万円の受信料だそうですね。BBCの予算たるや七千億円を超える。つまり、人口とか経済規模は日本の半分でありながら、公共放送に倍の資源を投じている国ということが言えようかと思います。

 しかも、その受信料の収納率は、日本のNHKが七割に対して、BBCは九五%、これは大変高い数字であります。もちろん、義務化とかあるいは電器屋さんからの通知義務、いろいろなことがあろうかと思いますが、私は、これの背景となっているのはやはり信頼度が大きく影響しているような気がします。NHKが最近調査された世論調査では、NHKを信頼している、大体五〇%、五三%。半分近い方が信頼していない。BBCは七五%だそうですね。

 これは私ども政治家の側も偉そうなことは言えません。最近の調査では一割とか二割とか、政治とか国会、行政を信頼しているというのが非常に低い中で偉そうなことを言えませんが、ぜひ、この信頼度を高めていくことが、ひいては納得して受信料を納めていただける、これが予算の獲得にもつながり、効率的な使用がさらに信頼を高めていく、こういういい循環をぜひつくっていただきますこと、主張申し上げまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

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