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〜会議録(06年6月1日 本会議答弁)〜
○古川元久君 民主党の古川元久です。
私は、ただいま議題となりました民主党提出の日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案及び自由民主党、公明党提出の日本国憲法の改正手続に関する法律案について、民主党・無所属クラブを代表して質問いたします。(拍手)
私たち民主党の基本的な立ち位置は、民主党案の趣旨説明にもありましたが、この国民投票法案が、主権者たる国民の自由闊達な議論を通じてみずからの憲法を選び取るための中立公正なルール設定のための法案であるという認識です。
私は、昨年秋以来の憲法調査特別委員会における論点整理を踏まえて、今般、与党及び民主党から国民投票法案が提出されるに至ったことを大変意義深いことと考えております。特に、当初、与党の皆さんが提示した案が委員会での議論を通じて修正され、今回提出された与党案では、多くの点で民主党の考えが取り入れられたことに関しては、率直に評価したいと思います。しかし、現時点においても、民主党案と与党案とは、幾つかの点で内容を異にしています。
以下、こうした点について順次両案の提出者にお尋ねし、両案の共通の立脚点となっている骨格的な考え方、現時点での相違点などを明確にしたいと思います。
さて、日本国憲法の立脚する国民主権原理は、憲法第九十六条が規定するところ、すなわち、憲法改正権限を国民自身の直接民主制的手続に係らしめているという点に究極的に表現されています。この意味で、国民投票法制は、まさに国民主権原理をいかに実質的に機能させるかという観点から検討され、定められるべきだと考えます。言いかえれば、憲法を変えるも変えないも主権者である国民が実質的かつ最終的に判断すべきであり、そのための言論の機会などをいかに保障し、国民の意思をいかに的確に反映させることができるかということこそが国民投票法制の制度設計の基本であるべきだということです。
現在、一部の世論や政党に、この国民投票法について、戦争をできる国家への改憲への一里塚、国民はこのような法律の制定を求めていないなどと激しく攻撃する議論が見られます。こうした批判の背景には、自由民主党が昨年十一月二十二日に新憲法草案を発表し、憲法改正のスタンスを明確にしていることもあると考えられます。
そこで、両案の提出者にお聞きします。
自由民主党の提案者は、今回の当国民投票法案は、ずばり、みずからの改憲案を実現することを目的に考えておられるのでしょうか。あるいは、党内にそのような声がやはり根強くあるのでしょうか。公明党の提出者は、自民党の改憲案の実現を手助けするためにこの法案を共同で提出されたのでしょうか。
また、民主党案提出者は、国民投票法制を整備すること自体が改憲を目的とするものだとの批判についてどのようにお考えでしょうか。
次に、憲法改正国民投票制度と一般的国民投票制度をあわせて整備することの是非についてお尋ねします。
民主党案では、憲法改正国民投票だけでなく、国政の重要問題に関する国民投票制度も一体として導入することとしています。現行憲法の議院内閣制の枠内で諮問的効果にとどまる国民投票制度を、あえて一体として整備する理由はどこにあるのでしょうか。
一方、与党案では、国民投票の対象は憲法改正だけとなっております。国政の重要問題を外した理由は何でしょうか。憲法改正国民投票と性質が異なることを理由に、別途検討すべきというスタンスなのでしょうか。あるいは、全く否定的にお考えなのでしょうか。性質が異なるが検討の余地があるというのであれば、対案を示していただきたいと思います。
次に、憲法改正案の原案の内閣の発案権の有無についてお尋ねします。
現行憲法にはこの点について明示的な規定はありませんが、民主党案では発案者を国会議員に限定し、内閣には認めていません。それはどのような趣旨に基づくものなのでしょうか。
また、与党案提出者は、この点、どのように考えるのか、お答えください。
次に、投票権者の範囲についてお伺いします。
民主党案では原則として十八歳以上となっており、その趣旨について、憲法の場合は、長期にわたってその効果が継続するため、若い世代に可能な限り参加する機会を認めるべきだとの御説明がありました。十八歳という年齢にした理由は何でしょうか。また、例外的に十六歳まで下げることが可能と規定されておりますが、どのような案件について例外的に投票年齢を引き下げることを想定しているのでしょうか。
与党案提出者は、投票権者の範囲を二十歳とした根拠をお聞かせください。特に公明党では、公明党のマニフェストで十八歳選挙権の実現を掲げていることとの整合性を踏まえ、投票年齢を十八歳以上にすべきではないかとの意見が大勢を占めたと伺っております。公明党の提出者は、投票年齢を十八歳とした民主党案についてどのようにお考えか、お答えください。
次に、国民投票の過半数の分母の問題についてお尋ねします。
憲法第九十六条では、憲法改正の成立に国民投票で過半数の賛成を必要とするとされていますが、過半数を計数する際の分母をどのようにとるかで両案には違いがあります。
民主党案では、所定の用紙を用いない投票を無効投票とした上で、投票総数の過半数の賛成で改正が成立することとしていますが、マル印以外の他事記載をした投票は有効となり投票総数にカウントされ、所定の用紙を用いない、例えば広告の裏にマル印を記入したような投票は投票総数にはカウントされないという趣旨と解してよろしいのでしょうか。一般的に、公職選挙法などでは他事記載は無効票とされますが、このようにあえて異なる考え方を採用した理由をお尋ねします。
一方、与党案では、マル・バツ印以外の他事記載を無効票とした上で、有効投票総数の過半数の賛成で改正が成立することとしていますが、あえてこのように分母となる投票の範囲を狭めるのは、憲法改正をできるだけ容易にしようとする意図によるものなのでしょうか。
次に、国民投票運動に対する規制の考え方についてお尋ねします。
これまでの議論の中では、国民投票運動と公職選挙法における選挙運動とを類似のものとみなし、国民投票運動に対して選挙運動規制と同様の規制を行うべきとする意見もありました。しかし、選挙運動の場合には、その実質的担い手が主に候補者や政党であるのに対して、国民投票運動の場合には主権者である国民一人一人であるという点で大きく異なっているように思います。
こうした点も含め、両案の提出者は、国民投票運動への規制を検討するに当たり、公職選挙法との相違点をどのように考えているかをお尋ねいたします。
これに関連して、国民投票運動が禁止される特定公務員の範囲について、民主党案では投票事務関係者等に限定しています。その理由は何でしょうか。民主党案提出者にお尋ねします。
一方、与党案では、裁判官、検察官、警察官なども特定公務員として禁止されるとしています。ここまで特定公務員の範囲を広げる理由は何でしょうか。与党案提出者にお尋ねします。
また、公務員等、教育者の地位利用による国民投票運動についても、与党案では禁止規定を設けています。この理由はどこにあるのでしょうか。例えば、大学の憲法の授業で教授が憲法改正案を批判することは、教育者の地位利用国民投票運動に該当するのでしょうか。あわせてお答えください。
一方、民主党案では、公務員等、教育者の地位利用国民投票運動に関する禁止規定を置いていませんが、この理由は何でしょうか。
あわせて、与党案では、国民投票運動の際に、買収を行った場合の罰則が規定されています。規定を設けた理由は何でしょうか。ミュージシャンなどが改憲賛成集会、反対集会に無料出演し、歌でみずからのメッセージを伝えることは同罪に該当するのでしょうか。
一方、民主党案では、買収罪は設けられていませんが、国民投票が金銭で買われるようなことがあるのは望ましくないのではないでしょうか。対価性が極めて明らかなケースは規制してもよいのではないかとも考えられますが、この点、民主党案提出者はどのように考えますか。
最後に、国民投票と報道の自由をめぐる問題についてお尋ねします。
憲法改正国民投票法制において、国民が主権者として主体的に正しい判断を下すには、いかに有用な情報を得るかがとても重要です。その際、マスコミなどの報道機関の役割は、言論の自由、報道の自由という消極的な意味だけではなく、むしろ積極的に評価されるべきではないかと思います。その意味において、当初、マスコミの報道規制を検討していた与党がそれを削除したことは、評価すべきだと考えます。与党案、民主党案の両提出者は、憲法改正国民投票におけるマスコミなど報道機関の役割についてどのように考えますか。また、マスコミの報道規制についてどのように考えているのでしょうか。
一方、両案ともに、投票日一週間前の広告放送を禁止しておりますが、その理由は何でしょうか。この広告放送禁止は報道、言論規制には当たらないのでしょうか。また逆に、広告放送については、投票日一週間前に限らず全面的に禁止すべきだとの意見も聞かれます。これらの点につき、両案の提出者のお考えをお尋ねします。
以上、本日は、両国民投票法案の骨格的な部分についてお尋ねしてまいりました。本日の質疑内容を踏まえ、今後さらに十分な時間をかけ、有識者や国民の皆さんの意見にも耳を傾けつつ議論を深め、だれが見ても中立公正な国民投票法が、改憲、護憲の立場を超えた幅広い合意によって制定されるよう努力していくべきことを最後に申し上げ、私の質問といたします。(拍手)
〔船田元君登壇〕
○船田元君 与党案の提出者を代表いたしまして、古川議員の御質問について答弁を申し上げます。
以下 省略
〔斉藤鉄夫君登壇〕
○斉藤鉄夫君 古川議員の御質問に、七点お答え申し上げます。
以下 省略
〔 小川淳也 君登壇〕
○小川淳也君 古川議員にお答えを申し上げます。
まず、国民投票法制の整備が改憲を目的とするものではないか、その批判についてのお尋ねがございました。
率直に申し上げて、そうした御批判に対しては耳を傾けねばならないと思います。しかしながら、あくまで冷静に、客観的に理解を求めねばなりません。この法案は、憲法改正の肯定はもとより、その否定をも含めて国民の意思表明に道を開くもの、そのための手続を定めようとするものでございます。
その意味では、決して改憲を容易にするものでも、また困難にするものでも、ましてや、それを目指すものでもございません。ただただ、国民の自由な議論を確保し、その意思を的確に反映すべきこと、そのことに腐心をしたものであること、御理解をいただきたいと思います。
特に、我が党案は、憲法改正に限定をせず、広く国政一般の重要課題について国民の声を聞きたい、そういう案となっておりますことをあわせて強調させていただきたいと思います。
次に、一般的国民投票法制を一体で整備する理由についてお尋ねがございました。
確かに、間接民主制、代議制を採用する我が国の統治理念、これは十分踏まえねばなりません。しかし、昨今のEU憲章をめぐるヨーロッパでの国民投票、また、国内でも市町村合併や米軍基地問題をめぐる住民投票、こうした例に見られるように、国民の皆様が直接意見表明をされる機会がふえつつあることも事実であります。
こうした中、我が国においても、特に重要な課題については、間接民主制を補完するものとして、直接国民の意思が表明される機会が保障されてしかるべき、そうした観点に立ち、今回の一体整備を目指すものでございます。
憲法改正の国民投票法制は、その意味ではこの一般的な投票法制の特例として位置づけられるものになりますし、あわせて、一般的な国民投票制度については、間接民主制を採用する我が国の統治原理と矛盾しないよう、あくまで諮問的なものとして整備する予定でございます。
次に、憲法改正の発案を国会議員に限定した理由についてお尋ねがございました。
憲法の制定、改廃は、国内法制上最上位に位置づけられる立法行為でございます。だからこそ、その最終決定権は、主権者たる国民自身の手にゆだねられております。したがって、この発案過程においても、その行為の重みに十分配慮をし、国民の代表、国権の最高機関の構成員である国会議員に限定されてしかるべきではないか、そうした考えに立っております。
仮に内閣による発案を認めることとすれば、これは、実質的には中央官庁の手によって発案が促されることとなり、これでは、本来的に国家権力、行政権力の統制という側面をあわせ持った憲法の役割を侵しかねない、そうした懸念からも、政府からの発案については極めて抑制的に考えるべきと考えております。
次に、投票権者の年齢についてお尋ねがございました。
国際的に見れば、既に議論がございましたとおり、多くの国々で参政権は十八歳から付与をされております。特に先進主要国では、もはや我が国だけが取り残された状況にあります。民法の成人規定は百年以上前の価値観によって立ち、結婚や自動車免許の取得では、既に十八歳をもってその資格が付与をされております。
我が党は、そもそも参政権を十八歳以上に引き下げるべきことを主張しており、これとの関連で、若い世代の声を政治に反映させる必要性、特に憲法改正のようにその効果が長期に及ぶもの、これについてはその必要性が特に高い、そうした認識に立っております。
なお、十六歳の例外規定については、国内でも、市町村合併の是非を問う住民投票に中学生が参画した事例がございました。こうした事例も踏まえ、今後の委員会審議等を通じてこの点の議論を深めてまいりたいと思います。
最後に、投票用紙の扱い及び投票総数の考え方についてお尋ねがございました。
所定の用紙外の投票を無効とする点については、議論をまたないと思います。一方の他事記載を伴った投票、これを総数に組み入れることについては、御指摘のとおり、公職選挙と取り扱いを異にするものでございます。
この点、国民投票においては、他事記載等によって選挙の秘密を侵し、その公正を害される蓋然性が低いこと、加えて、白票の扱いについても、複数の選択肢から具体的な投票先を確定し、その多寡を競わねばならない公職選挙とは異なり、発案への賛成が全体として、総体として過半を超えるのか否か、その点に絞った評価をすれば足りること、同時に、こうした扱いこそが憲法の条文に最も素直な国民の意思の評価ではないかと考えられること、以上の判断によって立ったものでございます。
残余の質問につきましては、同僚議員からお答えをさせていただきます。(拍手)
・・・以下省略・・・
○石井啓一君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました自由民主党、公明党提出の日本国憲法の改正手続に関する法律案及び民主党提出の日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案に関して質問をさせていただきます。(拍手)
質問に先立ち、現行憲法及び憲法改正に対する公明党の基本的な考え方を述べさせていただきます。
公明党は、現行の日本国憲法はすぐれた憲法であり、戦後日本の平和と安定、発展に大きく寄与してきたと高く評価しております。中でも、国民主権主義、恒久平和主義、基本的人権の保障の憲法三原則は、不変のものとしてこれを堅持すべきだと考えております。また、憲法第九条に関しては、アジアの諸国民に多大な犠牲を強いたさきの戦争に対する反省と、再び戦争を繰り返さないというメッセージを発してきた平和主義の根拠であり、戦後の日本の平和と繁栄を築く上で極めて大きな役割を果たしてきたと認識しております。
しかし、日本国憲法制定以来六十年近い歳月が経過し、制定時には想像されることがなかった新しい国民の権利や新たな課題が提起されるようになりました。すなわち、国民主権の一層の明確化、環境の重視、知る権利やプライバシー権など新たな人権の確立、平和主義のもとでの国際貢献の推進、地方分権の確立等であります。
憲法は、その国のあり方を規定する柱であり、憲法論議は、二十一世紀の日本をどのような国にするのかとの未来志向に立ち、五十年先、百年先を見据えて進めるべきであります。
こうした認識の上から、公明党は、憲法三原則と平和憲法の象徴である憲法九条を堅持した上で、時代の変化に応じて現行憲法を部分的に見直し、新しい条文を加え、現行憲法を補強していく加憲という立場に立っております。
この加憲方式は、次のような理由から極めて現実的な方法と考えております。
第一に、現行の憲法はすぐれた憲法であり、広く国民の間に定着し、支持されているというのが基本認識であります。
第二に、憲法を見直すに当たって、条文すべてを見直すべきとの全部改正論や、逆に全く変えてはいけないとするかたくなな護憲論は、ともに国民の幅広い理解を得るのは難しいと考えます。その点、加憲は、国民に広く定着している現行憲法の条文は残した上で、時代の進展に伴って必要なものがあるならば、それを加えて補強していく方式であり、現時点では最も現実的な手法であると考えております。
第三に、憲法改正について規定をいたした憲法第九十六条では、第一項で改正の手続を規定し、第二項で改正の公布について、「憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。」と規定しておりまして、現行憲法と改正憲法とが「一体を成すもの」との表現は、加憲的な方向性を示していると理解をしております。
また、アメリカ合衆国憲法における修正条項、フランス憲法前文における従前の憲法規定への言及や条項の追加などといった立憲主義先進国の例も、時代状況に合わせて憲法を補強していくというスタンスをとっていると認識をしております。
このように、加憲方式をとることは、現行憲法の原理原則を生かしながら、必要と思われるテーマについて民主主義的な形で幅広い合意を形成していけるものであります。
衆議院憲法調査特別委員会における参考人質疑の中でも、加憲については、広く国民の合意を得る上で現実的な選択肢であると評価されているところであります。
続いて、具体的な質問に入ります。
このたび、憲法改正の手続を定めた両法律案が提出をされました。現行の日本国憲法は、日本国民の間にその理念、精神が浸透し、広く国民に受け入れられておりますが、憲法第九十六条の中で規定されている改正の手続については、この六十年近くの間、定められませんでした。
憲法改正手続法案の提出は、これに対する意識、世論の高まりと憲法の要請に応じたものであり、今国会において精力的な議論を経て提出に至った意義は、歴史的に見ても大変大きなことであり、評価すべきことであると考えます。
そこで、まず、このたびの法案提出に至った意義について、両法案提出者に見解を伺います。
今回の手続法の制定については、ただいま申し上げたとおり大変重要なことではありますが、あえて確認するならば、この手続法の議論と憲法改正の中身の議論は別のものであり、具体的な憲法改正に関する論議は別途行うべきであります。今回の立法は、憲法の要請と世論の高まりに応じた手続法の整備であり、憲法の中身をどうするかの議論は、広く国民の理解を得ながら、じっくりと腰を据えて取り組むべきものであると考えております。
この点について、両法案提出者の認識を伺います。
次に、ただいまの改正論議の質問に関連をして、国会法の一部改正における憲法審査会について伺います。
両法案では、各議院に設置する憲法審査会が、日本国憲法及びその関連法制について広範かつ総合的に調査を行うとともに、憲法改正の原案及び憲法改正手続法案を審査するとしておりますが、この規定は大変に重みを持つものであります。憲法の改正について国民が丁寧な判断をするためには、国会において十分丁寧な議論をすることが重要であります。ゆえに、まず、憲法改正の是非、変えるとすれば何をどのように変えるのか、また、憲法の条文を変えなくとも運用を変えればよいのか等の議論が必要であり、ここの条文で規定されているように、憲法審査会で広範かつ総合的な調査を十分に行うことが重要であります。
したがって、今回の手続法が成立をして、公布の日以後初めて召集される国会で両院に憲法審査会が設置されたとしても、直ちに憲法改正原案を審査するような拙速な論議は避け、まずは、改正の是非も含め、憲法に関し丁寧に調査することが必要と考えます。
この点について、両法案提出者はどのようにお考えか、伺います。
次に、これまで憲法調査特別委員会での議論の中でも大きな論点となってきた点についてお尋ねをいたします。
まず、国民投票の対象についてであります。
一般的な国民投票を否定するわけではありませんが、国民投票が要件であり、その結果に法的拘束力がある憲法改正の国民投票と、任意で諮問的な効果しか有しない一般的な国民投票とは切り離して論じるべきだと考えます。与党案でその対象範囲を憲法改正国民投票に絞った理由を確認いたします。
次に、投票権者の範囲についてであります。
基本的には、国政選挙と一致させるべきだと考えます。その上で、できる限り多くの方に判断していただけることが望ましいと考えております。対象年齢に関しては、公明党は、公職選挙法の対象としては十八歳選挙権を主張しておりますが、国民投票の対象年齢は、現行公選法に合わせ、当面二十歳以上にせざるを得ないと考えます。一方で、今後、国民投票の投票権年齢は、我が党が主張する公選法の選挙権年齢と合わせ、十八歳に引き下げる努力をすべきと考えますが、与党案提出者の見解を伺います。
次に、投票用紙への記載方法と過半数の意義についてであります。
実際の投票に当たっては、国民の多様な意思をより的確に反映させることが重要であります。この点、与党案においては、憲法改正案に対し、賛成するときはマルの記号を、反対するときはバツの記号を自書することとし、憲法改正案に対する賛成の投票数が白票等を除いた有効投票の総数の二分の一を超えた場合に、憲法改正について国民の承認があったものとしており、投票者の賛否の意思を的確に反映するものと評価をいたします。一方、民主党案では、憲法改正案に賛成するときはマルの記号を自書し、反対する者は何も記載しないこととしております。これでは、白票に積極的な反対の意思と中間的な立場の意思が混在することになり、有権者の意思を的確に反映できるとは考えられません。また、多様な意思が含まれ得る白票を一律に反対票とみなすことには無理があると考えます。
この点について、与党案提出者の考え方を確認いたします。
次に、個別発議についてお尋ねします。
憲法改正原案の発議に当たっては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする個別発議が規定をされておりますが、現実的に考えてもこの方法が適切であり、評価すべきであります。例えば、安全保障の問題、プライバシー権などの人権の問題、環境権の問題などはそれぞれ異なる内容の問題であり、それぞれの内容について国民の意思を確認することにより、国民の意思をより的確に反映させることができると考えます。
その上で、国民の間で国民投票に対するイメージの共有がなされることが重要であります。発議された関連する内容ごとに投票用紙が配られ、それぞれ別の投票箱に投票するという具体的なイメージを国民の皆さんに持ってもらうことが重要であります。
この点について、両法案提出者に見解を伺います。
次に、いわゆるマスコミ規制について伺います。
与党案の当初の協議では、報道機関に対して、国民投票の公正を害することのないよう、自主的な取り組みに努めるものとする等の訓示規定を設けるとの考え方があり、その後、報道機関による配慮のみ求めるとの議論になり、さまざまな議論を経て、最終的には、いわゆるマスコミ規制については全く設けないこととされたと認識をしております。
そこで、マスコミ規制を全く設けなかった理由について、与党案提出者に確認をいたします。
次に、罰則規定について伺います。
国民投票に関する運動や議論等については、基本的には、広く国民一人一人の自由な意思で行われることが望ましいと考えております。したがって、投票運動に対して萎縮効果があらわれないよう、公職選挙法で規定されているような罰則よりも緩やかなものとすべきだと考えております。
そこで、与党案提出者に罰則の考え方について確認をいたします。
それに対して、民主党案では、買収行為については全く罰則が規定されておりません。例えば、与党案で明記されているような、組織的に多人数に対して金品供与などにより投票に関する勧誘行為がなされた場合、どのように投票の公正性を担保するのでしょうか。
この点について、民主党案提出者にお尋ねをいたします。
最後になりますが、今回提出された両法案を並べて読んでみると、ほとんどの項目について一致をしております。これは、広く各党の合意を得るという前提で、これまで丁寧な議論がなされてきた成果であると存じます。
憲法改正のルールは、仮に現在の与野党の立場が変わったとしても、変わらないことが重要であります。そのため、公平中立なルールとして、多くの政党、議員の賛同が得られることが重要です。したがって、より幅広い合意を得るために、今後の国会審議において、与党と民主党双方が一致した形での法案成立を目指していくべきだと考えます。
この点について両法案提出者の見解を伺い、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔船田元君登壇〕
○船田元君 与党案の提出者を代表いたしまして、石井議員の御質問について答弁を申し上げます。
以下 省略
〔斉藤鉄夫君登壇〕
○斉藤鉄夫君 石井啓一議員の御質問に、五点お答え申し上げます。
以下 省略
〔鈴木克昌君登壇〕
○鈴木克昌君 私から石井議員に対して、三点御答弁をさせていただきたいと思います。
以下 省略
〔 小川淳也 君登壇〕
○小川淳也君 石井議員の残余の御質問にお答え申し上げます。
まず、発議の方法と投票の方法に関するイメージについてお尋ねがございました。
憲法改正は、国家の基本的なルールの変更に当たります。それだけに、できるだけ具体的に、的確に民意を反映せねばなりません。だからこそ、可能な限り、まとまりのある課題ごとに個別に発議をし、個別にその是非を問うことが望ましいと考えております。例えば、安全保障の問題とプライバシーや環境権創設に係る議論、これを抱き合わせでその是非を問うようなことは許されないと考えております。
具体的な投票方法については、選挙の際と同様、個別投票案件ごとに投票用紙を受け取り、記入をし、投票箱に投じ、次の投票に移る、そうした手法が想定されるのではないかと考えております。
次に、国民投票に関する買収行為について、民主党案に対するお尋ねをいただきました。
国民投票制度は、既に議論になっておりますとおり、個人の当落を争う選挙とは異なり、個人的利害から買収行為へとつながる危険性は高くありません。そこに基本的な差異があると認識をいたしております。同時に、国民投票運動は主権者たる国民の政治的意思の表明の機会であり、最大限自由な議論の機会が保障されねばなりません。
もとより、金品で投票を誘導することは許されることではありませんし、居酒屋での例はるる申し上げました。その弊害が生じる蓋然性、危険性と、一方で、自由な議論を最大限保障せねばならない、国民の議論を萎縮させてはならないことの要請、この両者の比較考量から今回の判断に至ったものでございます。
最後に、与野党が一致して法案成立を目指すべきではないかという趣旨のお尋ねをいただきました。
国民投票法制については、与野党間が利害を衝突させ、それを争う性質の案件ではございません。この点、全く同感でございます。その意味では、御指摘の与党、そして我が党はもとより、現段階においては投票法制の制定そのものに反対をしておられる会派の皆様を含め、幅広に議論が行われ、合意形成が進められることが期待されるものと考えております。
しかしながら、そうは申しましても、通すべき議論は通し、闘わせるべき議論は闘わせねばなりません。そして、その私どもの主張の原動力は、ひとえに、いかに投票過程に国民の意思を的確に反映させるか、その点に絞った建設的な議論である旨申し添え、答弁を終わらせていただきます。(拍手)
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