民主党 衆議院議員 小川淳也
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〜会議録(10月25日法務委員会での質問)〜

本日の会議に付した案件
  犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)

○ 塩崎委員長  次に、小川淳也君。

○ 小川(淳)委員  民主党の小川淳也でございます。質問の機会をお与えいただきました先輩諸氏に感謝を申し上げたいと思います。
  四国比例区から参っております。また、私自身、今回初当選させていただきました新人議員でございまして、その意味で、ややうぶな質問もあろうかと思います。ぜひおつき合いをいただきたいと思いますし、また、自治官僚として約九年余りの務めを果たしてまいりました。そのこととの関連も含め、今回の組織犯罪処罰法の改正案、特に共謀罪の新設についてお尋ねをさせていただきたいと思っております。
  もとより、この委員会には法律の専門家の方々がたくさんお詰めでございます。そして、その点からの質疑はたくさんなされたはずでございまして、お聞きをした上でなお納得のいかないところを重ねてお聞きすることに加えて、申し上げましたとおり私自身が自治官僚出身でありまして、なぜここまでこの法案をめぐって混乱し、審議が滞り、大臣も大変御苦心を抱えておられることと思いますが、こんな事態に至っているのか、その原点に立ち返り、できれば必要な修正等の機運をおつくりいただきたい、そんな思いで質問に立たせていただきたいと思っております。
  まず、私は今は野党に所属をいたしております。今はです。そして、予算審議あるいは税金の使われ方をめぐって、よく与党さんと対立するわけであります。あるいは経済政策、さまざまな政策について一般的には対峙をして、対立して議論を闘わせるわけでありますが、時に、外交とか安全保障、これは相手のある話でもありますし、国家統治の基本でもございます。こういったものについては、与野党に余り差がない方がいいんじゃないかという議論があることも事実でありまして、私もそう思っています。
  しかし、この犯罪の創設、共謀罪の創設、国民の言動、行動、自由の範囲をどこで画すのかという極めて根本的な課題について、与野党に対峙して議論するようなことではなく、むしろ国会で政府ときちんと対峙して議論を進めるべき、私はそう認識をいたしております。それほど重要で本質的な議論だと思っております。
  その意味で、この質疑の準備に当たりまして、前国会、そして今国会の、私ども野党の質疑はもちろんのことでありますが、与党の質疑の中に、大変敬服に値する議論が重ねて行われてきておりますこと、特に、前国会におきます田村委員、早川委員、そして公明党の漆原委員、また今国会でも、柴山委員、稲田委員、そして同じく早川委員、同じく公明党の漆原委員。平沢先生については後ほど申し上げたいことがございます。これら与党の先生方から大変的確な御指摘を受けている大臣初め法務当局には、まずこの声、国民の代理人の声として真摯に受けとめていただきたい。そして、私も一人の国会議員として、与野党に限らず、これらの声を代弁する者として質疑を行わせていただきたいと思っております。
  ただ、これからお尋ね申し上げますが、大臣、内閣提出法案がことごとく国会でスムーズに成立してきた、私はこのことこそがむしろ異常だと思っています。内閣から出てきた法案を国会の場で審議をして、修正を加える、あるいは時に廃案になる、これこそむしろ日本の国会で当たり前のことにしなければなりません。その意味で、大臣を、ある種の責任はもちろん感じていただかなければなりませんが、必要以上に攻撃するつもりは全くございませんので、その前提も置いていただきたいと思います。
  それでは、質疑に入らせていただきますが、まず、総論でございます。
  この法律案、十五年の通常国会に提出されたとお聞きをしております。その間、一度の修正もなく五度の国会をやり過ごし、一度廃案になっている、これは間違いないかと思いますが、それが事実として間違いないこと、それから、そのことに対して大臣はどう感じておられるか、御所感をお聞きしたいと思います。

○ 南野国務大臣  まずは、当選おめでとうございます。先生のようなフレッシュな風が入ってくるということがディスカッション、審議をすばらしいものにしていくものだというふうに思っております。
  このような重要な法案ということについては、与党、野党の利害関係があってはならないというふうに思います。これは国を守る問題であり、国民を守る課題でございます。今どのような形で国がこういった犯罪、共謀罪に直面しているかということを真摯に考えて、きょう審議することが一番大切であろうかというふうに思っております。
  それから、今まで幾つか、二回ぐらいですか、廃案になったということでございますが、それは先生方のこの場における審議が一番真理であろうと思っておりますので、そういう意味では、大いなるディスカッションをしていただければいい。我々は、これはすばらしいと思って皆様方に法案を提出させていただいてはおりますけれども、その審議を積み重ねることによっていいものになっていくことが、これが大きな目的であろうというふうに思って、国民に利する法律をつくりたい、そのように思っております。

○ 小川(淳)委員  国会の審議を大変尊重した御発言、そのとおりだと思います。しかし、であるならば、前回廃案になった時点で、早川委員が与党質疑の中で御指摘なさったと思いますが、必要な修正、前国会で議論になったことを修正した上で出していただきたかったということをおっしゃったはずでございます。
  それから、もちろん、審議になかなか入ってくれなかった、あるいは、審議をしようと思ったら、非常にきかん気の強い総理大臣がおられて、気がつけば別件で解散になっていた。いろいろ不幸な経過があったことはそのとおりだと思いますが、今のような御発言であれば、やはり法案の中身に、当局として、法務省として、大臣として、内閣として、問題がおありだと思いますか、それとも国会の審議の方がおかしいと思われますか。お答えください。

○ 南野国務大臣  私は、今総理大臣のことを暗におっしゃったかと思いますが、そういうことについても問題視いたしておりません。適切な総理大臣であると思っておりますし、また、この審議が廃案になったということについても、これもそのとおり事実を認めざるを得ないということでございます。
  そういう意味で、既に国会承認をいただいております国際組織犯罪防止条約、これは国際社会と協力して一層効果的に国際的な組織犯罪を防止することなどを目的とするものでありますので、国際社会の一員として、我が国としても早期に締結する必要があります。また、我が国における組織犯罪対策にも資するものでありますから、早急に条約の内容に従った法整備を行う必要があると思っております。
  法案の共謀罪につきましてさまざまな御意見や御批判があることは、いろいろな声を承っておりますけれども、法務省といたしましては、法案の共謀罪はこの条約の内容に従ったものであり、また、厳格な組織性の要件をつけることにより、組織的な犯罪集団が関与する犯罪の共謀に限って成立するものとしていることなどから、前回と同じ内容のものを提出するということにいたしました。その同じ内容を提出したことによって、皆様方に審議をしていただく、議員の皆様方の審議でそれをいい形にしていただけることが一つの方法であろう、目的であろうというふうにも思っております。

○ 小川(淳)委員  そのとおりですね。ですから、国会の審議の状況、議論の中身を見て、法案を少しでもよいものにしたい、これは国会も内閣も同じ思いだと思います。
  その前提で、時代的な背景認識を少しお尋ねしたいと思っております。
  やはり、世界を決定的に変えた事件は、二〇〇一年の九・一一、アメリカでの同時多発テロ事件だったと思います。私も翌朝朝刊を開いて、その夜はニュースも見ずに床に入っておりました、朝新聞を見て、何が起きたのか理解ができませんでした。大変な事件でした。そして、その何年か前、平成七年、地下鉄でサリンがまかれたという事件がありました。私はあれも、当時沖縄県庁に勤めておりましたが、理解できませんでした。何が起こったのか、この日本で、世界で。
  それくらい、組織的な犯罪、また日常生活を脅かすような実体の見えにくい存在、これは確かに、この二十一世紀の新しい課題であり、国際社会が一生懸命に立ち向かっていかなければならない課題だと思います。
  大臣、このサリン事件、そしてアメリカの同時多発テロ事件、世界は不安な方向へ、日本は不安な方向へ向かっているというふうに思われますか。これは本当に素朴な情感、感情、直観で結構です。お答えをいただきたいと思います。

○ 南野国務大臣  今のところ、いろいろな犯罪が国を越えております。国際的にも広がっております。そういう越境性の問題は、我々無視することはできないのではないだろうか。情報機関にしても、これは高度化いたしておりますし、煩雑化いたしております。そういう中では、そういうことに向かうという決定ということではなく、そのこともあり得るかもわからないということで、やはり準備していかなければならない。病気でいうならば、予防対策をしていかなければならない、そういうふうに思っております。

○ 小川(淳)委員  看護界御出身の大臣ならではの御答弁、ありがとうございます。
  確かに、一人の人間として、世界が、あるいは日本が何か不安な方へ向かっていると感じられるのは、当然のことながら、真っ当だと思います。そして、そのことに対して、法務大臣として、大変重責を背負われる立場として、具体的な手を打っていかなければならない、そのこともそのとおりだと思います。
  しかし一方で、私は、ことしの春ですか、アメリカを訪問する機会がございました。入国管理のときにびっくりしました。何年かぶりで海外に出て、アメリカへは実は初めて渡ったんですが、入国管理のときに指紋をとられたんですね。そして、顔写真を写されました。ここまででもう長蛇の列なんですね、アメリカに入国しようとすると、大臣御存じだと思いますが。それは外での経験です。
  それから、日本の国内、私は愛知県の春日井市に直近、勤務をしておりました。そこで企画部に籍を置きまして、市政全般を拝見しておったわけでありますが、当時、春日井市内の警察署長さんから、春日井市の一番繁華街、大通りに防犯ブザーを設置したいというお話をいただいたんです。それはいいじゃないですかと警察署長さんに申し上げました。
  ところが、これは私の方が十分お聞きをする機会がなければならなかったんだと思いますが、設置をして除幕式に至ろうとするときに、その防犯ブザーには、防犯ブザーだけではなく監視カメラがついていたということを私はうかがい知ったわけです。急いで当時のお仕えしていた市長に報告を入れて、本当にいいんですかと。最も大きな繁華街で、人の出入りが多いところに監視カメラを設置するということに対して、私は大きな懸念を抱いたわけでありますが、当時の市長は、それも踏まえた上で、よしというふうに最終的には判断をされて、警察当局との話はついた、設置をされたわけであります。
  ほかにも、ロンドンの爆破テロ事件の犯人を挙げるのもカメラが役立ったと言われていますし、日本でも、歌舞伎町ですか、監視カメラがついた。あるいはエレベーターの中、いろいろなところに監視カメラがついている。
  世上、先ほど申し上げたように不安が高まって、漠然とした恐怖、おびえを感じながら生きる一方で、監視カメラの存在ですとかさまざまな統制、監視社会がやってこようとしている、これに対する危機感もあわせて増幅されている、これが今の世相ではないかと思いますが、大臣、その点いかがですか。

○ 南野国務大臣  いろいろな国が自国に対しての予防策を考えていこうとしていることだと思っております。そういう意味では、その国の習慣またはいろいろなその国がなされていくであろう価値観とも考えて一つの予防策をしていくであろうと思っております。さらに、それだけでは済まない、そのそれぞれの国の状況と連動しながら、万一大変な事態に直面する可能性がある場合はそれを未然に防いでいかなければならない、そういうような思いがあります。それが共謀罪の一つであろうというふうに思っております。

○ 小川(淳)委員  今申し上げたこと、恐らく大臣も同じような認識を持っておられると思いますが、まさにそういう時代背景の中で、平成十二年に今回改正の対象になっております組織犯罪処罰法ができたわけですね。そして同時に、通信傍受法が施行になっているわけですね。さらには、最近の流れを見ますと、有事法制、そして住基ネット、それから個人情報保護法。
  一方では、治安維持をしなければならない、あるいは社会を適正に管理、統制しなければならないという要請と、その一方で、人権侵害あるいは自由の侵害、自由な空気の侵害、この不安に脅かされなければならない。
  私は、これは両方、もちろんこの時代背景の中でやむを得ないことだと思っています。当然のことだと思いますが、大臣にぜひ心してかかっていただきたいのは、社会の治安を守っていく、あるいは適正に管理された、統制された社会を維持していく、秩序を守っていくお仕事、これは法務大臣のお務めであります。一方で、個人に天然のものとして保障しなければならない自由、人権、これがきちんと守られた社会にすること、守っていくこと、これも法務大臣のお務めであります。
  時に背反をし、この難しい時代だからこそ難しいバランスをとらなければならない大臣のお務め、これは大変なお務めだと思います。治安を維持すること、人権を守ること、両方とも大臣のお務めであり、まさにその難しいバランスをとることこそが大臣のお務めであると私は思っておりますが、その点、大臣、いかがですか。

○ 南野国務大臣  先生おっしゃられたとおりでございまして、そのバランスは法務大臣一個人に当てられるものではなく、それも含めて、みんなで、国民で共同してつくっていく方がいいことであると思います。
  今、中学校の教育の中では法教育というものを導入し始めております。大人がなかなか法律を守れない、ルールを守れないという中で、小さいころから子供たちがそれを検討していくということになっていけば、もっとルールを守り、お互いを尊重し合う生活ができるんじゃないかなという基本的な問題点はあります。
  だから、今先生御指摘のとおりの法務大臣の役割というのもその中にございます。基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護等を図ることを任務とする法務省の事務を統括する立場でありますから、常日ごろからこれらに配慮し、いずれかに偏ることなく、犯罪の処罰や治安の維持、法秩序の維持、国民の権利、自由の擁護とのバランスを保ちながら、その職務に当たるべきものと考えております。
  バランスは人にも大切でございます。国の秩序にも大切でございます。バランスのとれた人が国の秩序をつくっていけるともっともっといいものになるというふうに思っております。
     〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

○ 小川(淳)委員  大臣、おっしゃるとおりですね。
  ただ、みんなで考えて、みんなでよくしていこう、これはそのとおりでありますが、お尋ねしたいのは、日本国において統治を任された内閣、そしてそこに所属された閣僚として、日本国の治安維持と人権擁護、この二つを所管しておられるのは、南野大臣、日本であなたしかいないこと、あなた一人しかいないこと、このことに関しては、厳重な責任意識といいますか、プロ意識といいますか、それをぜひお持ちいただいた上で共謀罪の議論に入りたい、そう思っております。
  共謀罪の具体的な個別論点については既に出尽くした感もあろうかと思いますので、重ねて、どうしても納得いきづらい部分をお尋ねし、議論してまいりたいと思っております。
  まず一点目、この共謀罪の新設は、まさに大臣おっしゃったように、条約を批准し、その条約を国内法制化するというのが大変大きな要請である。そして、その条約は、そもそも国際犯罪を取り締まる、予防していく、抑止していく、そういう観点から議論を進められたはずの条約であること。であるならば、この組織犯罪処罰法の改正に当たっても、刑罰法制を謙抑的なものにする観点から、犯罪組織あるいは犯罪の中身に対する国際性、越境性、これを日本国として求めるべきではなかったかと思いますが、大臣、いかがですか。

○ 南野国務大臣  先生が今申し上げたこれらの要件に関してでございますけれども、国際組織犯罪防止条約三十四条二項には、国内法で共謀罪を新設するに当たっては、国際的な性質とは関係なく定めると明確に規定しております。
  そこで、法案におきましては、このような条約上の義務に従いまして、共謀罪の対象となる犯罪について国際性を要件とはしないこととしたものであります。

○ 小川(淳)委員  確かに、条約でそういう定めがあるわけですね。
  そして、大臣、ここは誤解をいただきたくないんですが、ここは日本国の国会でありまして、法律で決まったことを受けて、法律の範囲内でしか定めを置けない条例を議論している地方議会ではないわけです。そうすると、条約にそういう定めがあることを前提に条約を署名した、つまり、その条約の中身を是と判断した日本国政府の価値判断を問うているわけです。
  日本国政府として、国際性、越境性を要件としない共謀罪を全世界につくろうじゃないかといった条約に賛同した理由をお伺いしています。大臣、いかがですか。

○ 南野国務大臣  現実の社会におきましては、ある犯罪について、その背後に国際的な犯罪組織が存在するなど国際的な犯罪組織が関与しているものの、個別具体的な犯罪行為だけを見てみますと、犯罪行為自体は一国内にとどまるため、性質上の国際性を認めがたいような場合があります。それは先生御存じだと思います。また、特に捜査の初期の段階におきましては、捜査の対象となっている犯罪行為が国際的な性質を有するか、あるいは国際的な犯罪集団が関与しているかが明らかではなく、さらに捜査を進めてもその立証が容易でない場合も少なくありません。
  このような現実を踏まえますと、仮に国内法において国際性を要件とすると、対象となる犯罪事象は組織的犯罪の実態に照らして不相当に狭くなる上、さらに、早期かつ的確な検挙、処罰が困難となってまいります。それも先生御理解いただけているというふうに思います。
  さらに、実際上の問題といたしましても、仮に国際性を要件とした場合には、例えば、我が国の暴力団が外国の対立するマフィアの構成員を実行部隊を使用して殺害するという共謀をした場合は国際性が認められ、これを検挙して処罰することができるのに対し、同様に、我が国の暴力団が国内の対立する暴力団の構成員を実行部隊を使用して殺害するという共謀をした場合には国際性が認められず、これを検挙して処罰することができないこととなってしまいますが、組織犯罪を防止し、これと戦うという条約の趣旨から、そのような結果となることは不合理であると思いますので、先生のお考えいただいている国際性と国内性というものの、そこら辺をよろしく御検討いただきたいと思います。

○ 小川(淳)委員  大臣、やはりそうだと思いますね。条約に書いてあるからではなくて、国際性を外した、そのことに対して日本国として積極的に評価をしたというふうな答弁でなければ、これは条約と法律との関係を論じるに当たっては大きく筋を履き違えた議論になるということですね。その点、まずここで確認をさせていただきたいと思います。
  では次に、犯罪類型を個別に限定しない理由についてはどうお考えですか。

○ 南野国務大臣  このことに関しましては、この法律の共謀罪、これは国際組織犯罪防止条約の締結に伴う法整備として設けるものでございます。それが一番大切なポイントであるかとも思います。
  この条約は、その審議の過程で、対象となる犯罪をリスト化することの適否の議論を経て、最終的に、各国の国内法において定められている刑期の重さを基準といたしまして、「長期四年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪」、これは各国共通したものになってくると思います。これを重大な犯罪としまして共謀罪の対象犯罪とすることが義務づけられました。そこで、法案におきましては、このような条約上の義務に従いまして、重大な犯罪、そのすべてを共謀罪の対象としたわけであります。
  また、法務省といたしましても、組織的な犯罪集団は、みずからの組織の維持拡大のため、種々の利益を求め、手段、方法を選ぶことなくあらゆる犯罪活動を行うという特性を有することから、組織的な犯罪集団が将来実行し得る犯罪を漏れなく選別することは現実的に困難であると考えております。
  また、法定刑は、それぞれの犯罪類型ごとに、その違法性の高さや責任の重さに応じて定められるものでありますことから、犯罪の軽重をはかる尺度として一定の合理性を有することを考慮すると、これを基準として一定の重さ以上の刑期が定められている罪を共謀罪の対象とすることには合理性があるものと考えております。

○ 小川(淳)委員  犯罪組織がいかなる犯罪をもって脅威をもたらすか、それをあらかじめ類型化して個別にリストアップすることは実務的に困難だということですね。そういう議論があったわけです。
  では、お尋ねをいたします。同じく日本国内には、改正前の組織犯罪処罰法があるわけですね。そして、この組織犯罪処罰法の目的も、組織的な犯罪が平穏で健全な社会生活を阻害している、これに対して立ち向かう必要があるんだということを動機にして制定された法律であります。では、なぜこの法律の中では、個別に犯罪類型、この組織犯罪処罰法の処罰対象犯罪を殺人、逮捕監禁、強要、誘拐、信用毀損、業務妨害、詐欺、恐喝等々の十一の凶悪犯罪に限定することが実務的にできたのか、お答えください、大臣。

○ 大林政府参考人  お答えいたします。
  犯罪の分類という点で、犯罪処罰法の方は暴力団的なイメージが非常に強いものですから、要するに、そういう組織犯罪集団がどのような犯罪を行いやすいか、それから、あれは犯罪収益を剥奪するという目的を持っていますから、どのようなものが犯罪収益を生み出しやすいか、それから、凶悪犯罪、今おっしゃられたような、基本的には五年以上の懲役を持つ犯罪で、かつ、犯罪収益を生み出しやすい、例えば賭博なんかも入っていますけれども、そういうものを対象にして、あの法律は、一方ではそういう集団にかかわる者が犯罪を犯した場合に要件を加重する、それからもう一つはそういう犯罪によって生み出された収益を剥奪する、そういう目的から、とりあえず必要と思われる犯罪をピックアップしたものです。ですから、今回のように網羅的な形ではなくて、そういう観点から選ばれたものだ、こういうふうに承知しております。

○ 小川(淳)委員  とりあえず網羅をされたとお答えになられたわけですが、そこにはやはり重科の対象犯罪を限定しなければならない、抑制的に、謙抑的に組み立てなければならないという刑事法制の要請を受けたお考えがあったはずなんですね。そして、犯罪組織が国内において暴れ回ることはこの分野だろうという推測をされた、推論を組み立てられた。そして、今回の条約に基づくこの組織犯罪処罰法の改正は、そういった分野で暴れ回るであろう犯罪組織が国境を越えて暴れ回るだろうというおそれに対して設けられようとしているわけですね。
  私は、犯罪法制の本質論として、国際性だろうと、あるいは国内においてだろうと、本質論としては同じだと考えています。しかも、謙抑的に本来刑罰体系を組み立てなければならない刑事法制の当然の要請からすれば、現在の組織犯罪処罰法が個別限定で最もそのおそれの高いものをリストアップしているのと同じ趣旨で、この刑罰法規、共謀罪についてもリストアップすることが本来求められた要請ではなかったのかと思っています。
  条約上これは制限がある、あるいは条約にそう書いてある、そういった答弁では、なかなかさっきの議論では通らないわけでありまして、やはりその条約を認知した、署名をした日本国政府としての価値判断を積極的、肯定的に説明していただかないと国会、国民は納得しないわけであります。
  そこで、自由刑の長期の定め、四年以上をもって重大な犯罪とするということを条約には書いているわけでありまして、まさにそれを国内法化しようとしているわけですが、自由刑の長期の定めが四年をもって重大な犯罪だと認識をされた、その根拠について、大臣、お答えください。

○ 南野国務大臣  先ほども申し上げたとおりでございますが、法定刑はそれぞれの犯罪類型ごとにその違法性の高さや責任の重さに応じて定められるものであるということから、犯罪の軽重をはかる尺度として一定の合理性を有することを考慮すると、これを基準として、一定の重さ以上の刑期が定められている罪を共謀罪の対象とすることには合理性があるものと考えております。
  そして、我が国におきましては、重大な犯罪の一般的な基準を定めるものはありませんけれども、例えば弁護人がなければ開廷することができない必要的弁護事件は長期三年を超える懲役もしくは禁錮に当たる事件とされ、また、急速を要し、逮捕状なしに逮捕することが認められる緊急逮捕は長期三年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪とされておりますことから、条約において重大な犯罪の基準として長期四年以上の自由刑とされたことは、我が国の国内法に照らしても合理的なものであるというふうに思っております。
  主要先進諸国におきましては、長期四年以上の自由刑が定められている罪にはどのような犯罪が含まれており、その数が幾つあるかについては一般的に調査したことはございませんけれども、条約が犯罪とすることを義務づけている共謀罪あるいは参加罪については、各国においてどのような立法がされ、どのような犯罪が対象とされるかについて調査をしているという段階でございます。

○ 小川(淳)委員  委員長、恐れ入ります、先輩議員の御助言もございまして、定足数の確認をお願いします。

○ 吉野委員長代理  速記をとめてください。
     〔速記中止〕
○ 吉野委員長代理  速記を起こしてください。
  小川淳也君。

○ 小川(淳)委員  委員長、御協力ありがとうございます。
  質問を続けます。
  大臣の御答弁で、自由刑の長期四年以上の定めに合理性があるという御答弁がございました。そこはまさに議論のあるところでありまして、国内処罰法体系においてとってきた原則と、そして今回、条約に書いてあるとはいえ、それを受け入れようとする原則との間に余りに開きがあること、この点がまさに議論になっていることを指摘させていただきます。
  そして、おっしゃるように、国際性、越境性あるいは犯罪類型の個別限定、これは条約の条文上できないことになっているわけであります。では、一点お聞きします。
  この四年以上が合理的だと判断された根拠として、この条約自体、G8での議論が原動力になって進んできたというお話をお聞きしておりますが、それでは、主要先進国において、この長期四年以上の、な団体に構成員として関与するなどの行為を処罰しているものと承知いたしております。

○ 小川(淳)委員  大臣、合理性があると判断された、私はその過程においては当然こうした比較研究があってしかるべきだったという気がいたしておりますので、その点、厳しく指摘をさせていただきたいと思います。
  その上で、この犯罪類型の個別限定、そして国際性については条約上これを盛り込むことができないわけでありますが、もう一つの主要な論点でありますいわゆる共謀内容を推進するための外形的あるいは客観的な行為、オーバートアクトと呼ばれているそうですが、これについては国内法上の必要があるときは導入していいんだという条約上の許容があるそうでありますね。これは、なぜ今回の改正案において取り入れなかったのか。大臣、その理由をお聞かせください。

○ 南野国務大臣  国際組織犯罪防止条約第五条は、国内法で共謀罪を新設するに当たり、合意の内容を推進するための行為を伴うものという条件をつけることを認めております。このような条件をつけるべきか否かにつきましては法制審議会でも議論をされましたが、共謀罪については厳格な組織性の要件がつけられており、処罰範囲が不当に広がるおそれはないことなどに照らし、その必要はないとされた経緯がございます。
  このようなことから、法案におきましては、条約の言う合意の内容を推進するための行為を伴うという条件はつけておりません。
  以上でございます。

○ 小川(淳)委員  ただいまの大臣のお答えなんですが、実はこの法律の団体要件とは、御存じのとおり、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体」としかないわけであります。確かに、この犯罪の適用事例が暴力団あるいは詐欺団に対して適用されていることはそのとおりだと思います。しかし、法律上、団体とはあくまで制限がつけられているわけではありません。この点、それをもって、このより緩やかな、オーバートアクトを導入しなくていいんだという議論に直接結びつけることには大変無理があるという点を指摘させていただきたいと思います。
  そこで、まさに法制審議会でこの点を議論されたというお答えがございました。法制審議会、私も詳しくございませんが、どんな議論がいつ行われたのか、その概要だけで結構です、あるいは諮問内容と答申内容とを簡潔にお答えいただきたいと思います。法制審議会とはいかなる組織であり、この共謀罪の審議に関して、いつごろ、どんな内容の議論をし、どんな答申をいただいたのか、概要だけで結構です、簡潔にお答えください。
     〔吉野委員長代理退席、早川委員長代理着席〕

○ 南野国務大臣  先生お問い合わせの審議の概要についてでございますが、共謀罪の新設などを内容とする国際組織犯罪防止条約の締結に伴う罰則等の整備に関しては、平成十四年九月三日、当時の法務大臣が法制審議会に諮問を発出いたしました。これを受けた法制審議会は、刑事法部会の設置を決定し、以後、この部会において、平成十四年十二月十八日までの間、合計五回にわたり、諮問に付された要綱に沿って審議が進められ、さまざまな論点について慎重な議論が重ねられました。そして最終的には、この部会におきまして、賛成多数により、組織的な犯罪の共謀の罪を設けることなど、この条約の締結に伴う罰則等を整備することが相当である旨の決定がなされ、これを受けまして、平成十五年二月五日、法制審議会が法務大臣に対してその旨の答申を行いましたということでございます。

○ 小川(淳)委員  大臣のお答えによりますと、十四年の九月から十二月にかけて、三カ月間で五回の審議を行ったということでございます。これも価値判断の問題だと思いますが、これだけ大切な中身の審議でございますから、三カ月で五回というのは、審議としては十分に足るだけ深まったのか、あるいは議論が高まったのか、その内容に大変疑義を持たざるを得ないことを指摘だけさせていただきます。
  ところで、よく法制審議会で議論をした、あるいは答申をいただいた、それをもって法制化した、これは法務省に限らずどこでも言うことであります。議論あるいは結論の正当性を多分補っておられる、補おうという趣旨だと思いますが、この法制審議会、大臣から独立された機関ですか。お答えください。

○ 南野国務大臣  先ほども申し上げましたが、大臣の諮問機関でございます。

○ 小川(淳)委員  大臣、では、法制審議会の委員の任命権はどなたにございますか。

○ 南野国務大臣  諮問をお願いしている立場でございますので、大臣でございます。

○ 小川(淳)委員  大臣が委員を任命された諮問機関であるということでございますが、現在、この共謀罪におきまして、さまざまな議論が国会の内外で起きているわけであります。そして、その議論の主要な世論形成をしている、あるいはしようとしている団体の中に日本弁護士会という存在があろうかと思います。
  大臣、この日本弁護士会、反対を表明していることは御存じだと思いますが、この弁護士会の意見について、これは通告外になりますので所感で結構です、詳しいことはもちろん御存じだと思いますが、弁護士会の意見あるいはその存在感についてお答えをいただきたいと思います。どんな感想をお持ちですか。

○ 南野国務大臣  弁護士会は本当に専門的な方々のお集まりであり、いろいろと審議しておられることは傾聴に値するものだというふうに思っておりますが、すべての会員が反対しているというふうには思えないのではないかなという所感も持っております。

○ 小川(淳)委員  おっしゃるとおりですね。
  そして、大臣、この委員会で平沢委員が質問された中に、弁護士会がいつも正しいわけじゃない。それはそのとおりです。そんなのは当たり前のことです。しかし、法曹界に、どちらかというと国家権力に対峙する側に回られて人権擁護に当たっておられる、被告の弁護に当たっておられるこの弁護士さんの意見というのは、先ほど申し上げた、治安の維持、社会秩序を守らなければならない大臣、一方で人権を擁護しなければならない大臣、その大臣にとっては、十分耳を傾け、その声を、その心に意識を傾けるべきだと私は思います。
  そこで、お尋ねをいたします。
  私は、先ほど申し上げた与党委員の敬服すべき質疑、これはすべて弁護士さんの御出身の方ばかりであります。そして、もう一度法制審議会の議論に戻りますが、法制審議会の委員には何名の方がおられますか。大臣、お答えください。

○ 南野国務大臣  十五名の方でございます。

○ 小川(淳)委員  そのうち弁護士さんは何名おられますか。

○ 南野国務大臣  今リストを見せていただきましたが、お一人おられます。

○ 小川(淳)委員  私は冒頭、価値観の話として、その二つをうまくバランスをとられるのが大臣のお務めだということを申し上げ、それについては大臣もうなずいていただいたと考えております。その意味で、法務省のあり方あるいは法制審のあり方についても、その両者の意見をもっとバランスよく吸収することに意を用いられるべきではないか、してもいいんじゃないかという気がいたします。
  今、十五名の中に一人の弁護士さんがおられる。あるいは、学者の先生方でどういった足場を置かれている方がおられるのか私も定かではありませんが、そういったことも含めて、人権擁護の立場と治安を守る立場、これはもっとうまく吸収をすべき。そして、そこに欠けていたことがあったことこそが、今回の法案、これだけ国会でなかなか審議が進まず、また、これでいこうじゃないかという空気が起きない、その大きな原因の一つではないかと私は思っております。
  ついでにお尋ねいたします。
  法制審議会の構成について今お尋ねをいたしましたが、あわせて、今回、共謀罪の企画立案をされた法務省の事務方の総責任者はどなたですか、大臣。
○ 大林政府参考人  先ほども委員が御指摘のとおり、この法案は廃案となった経緯がございまして、大分前から出ているものでございます。私が起案したものではございませんが、私の前任に当たる刑事局長が一応責任者となって立案されたものと承知しております。

○ 小川(淳)委員  大林局長にはいろいろと御苦心をいただいておること、委員会を見ておりましてよくわかります。
  大林局長、簡単で結構です、本籍地、御経歴はどちらですか。

○ 大林政府参考人  個人にわたるものでございますが、せっかくのお尋ねでございますので、本籍は東京都でございます。

○ 小川(淳)委員  役所の籍を置かれている本籍地をお伺いいたしております。

○ 大林政府参考人  私は、今のところ、検事としての身分としては最高検検事でございます。それで法務省の刑事局長に充てられている、こういう形になっております。

○ 小川(淳)委員  大臣、大臣を最も身近に事務方で支えておられる方、どなたでおられますか。

○ 南野国務大臣  それは秘書官だったり副大臣だったり政務官だったりいたしておりますが、樋渡次官だというふうにも思っております。

○ 小川(淳)委員  にも思っておりますというお答えでしたけれども、事務次官がおられるわけですね。事務次官はどんな御経歴の中から就任された方ですか。

○ 南野国務大臣  検察官御出身でございます。ちなみに、秘書官も検察官出身でございます。

○ 小川(淳)委員  刑事局長さんは検事さん、これも当然のことかもわかりません。そして、法務省、さまざまな権益、バランスをとらなければならない、その事務方のトップが検察官でおられるわけですね。そして、法制審議会、十五人の委員の中に弁護士さんが一人しかいない。
  大臣、冒頭に戻ります。大臣は、この国にたった一人しかいない人権擁護の代弁者であります。ほかには政府機関がございません。大臣がたった一人で人権を守らなければならない、自由な空気を守らなければならない。そのお立場に立って、犯罪抑止ももちろんそうですが、刑事法制、司法行政全般に当たっていただかなければなりません。その大臣が身を置かれる組織がそういった組織であること、これは大臣御自身が自覚をしておられるのとそうではないのとでは、一つ一つの判断に差異が出てくる可能性がございます。
  ぜひとも国民の代表として、もちろん刑事法制の責任者であると同時に、国民の代表として司法刑事行政の監視あるいはコントロールに赴かれていること、そのことをぜひともお心におとどめいただいて、この共謀罪の議論、もし必要があれば柔軟に修正等々協議を進めていくこと、前向きに御検討いただくことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  ありがとうございました。

○ 南野国務大臣  先ほど、弁護士の方が一人しか十五人の中に入っていないということでございましたが、その十五名の中には本当にバラエティーに富んで、お一人お一人が大切な御意見をいただいております。その方のほかにも、労働組合または企業の方、マスコミの方も入っております。ちなみに女性が十九人中六人ということで、三割を女性の方にも充てておりますので、大変自由な、民主的なチームを編成しているということは申し上げられると思います。

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